2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of sub-millisecond XRD measurement technique under combined dynamic environment using DAC
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21K03711
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
河口 沙織 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (00773011)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ダイヤモンドアンビルセル / オペランドXRD測定 / 動的環境 / 急激加熱実験 / 急激圧縮実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
DACを用いた静的な圧力発生下における実験、研究が数多く成されてきた一方で、DAC中の試料環境の動的変化中におけるリアルタイム計測システム構築は未だ着手され始めたばかりである。本研究では急激な加減圧温度変化における反応過程観察を行うべく、SPring-8 BL10XUに設置されている高速X線検出器であるLAMBDA 750kにより最大2 kHzの連続測定と、複数の外場印加システムを組み合わせた統一制御システム開発を行い、実際にDACを用いて隕石衝突時の動的極限実験条件を再現することを目的としている。本年度は、高速圧力印加中における試料の状態観察を可能とすべく、BL10XUに導入された新規ガス圧制御システムを昨年度開発したサブミリ秒XRD計測基盤に組み込んだ。新規ガス圧力制御システムはガスラインを2系統搭載しており、加圧制御のみでなく、減圧制御者可能である。各バルブに対しトリガ信号による開閉機能を実装してあり、デジタル遅延パルス発生器による外部トリガ制御により、X線検出器LAMBDA 750kとガス圧制御装置のバルブ開閉のタイミング同期を図った。加圧実験では試料として圧力マーカーとして広く用いられている金(Au)と塩化ナトリウム(NaCl)を用いた。TTL信号から約1秒後にNaClのB1→B2相転移が観察され、この解析結果から、本システムを用いることで100GPa/s以上の高速圧縮実験が可能であることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の内容は(1) 加減圧制御を可能とするためのダブルメンブレンガス駆動式ダイヤモンドアンビルセルの開発、(2) 複合動的環境の統一制御下におけるサブミリ秒XRD計測技術の開発、(3) 100GPaまでの加減圧・温度変化中における試料の状態変化観察の3点となる。昨年度までに(2) 複合動的環境の統一制御下におけるサブミリ秒XRD計測技術の開発を終えており、今年度加減圧制御を可能とするダブルメンブレンガス駆動式DACの導入、及び急激圧縮実験その場のXRD測定基盤を構築し、実際に60 GPaを超える圧力までの急速加圧実験を行うことができた。昨年度と本年度に得られた結果について、放射光学会の年会において招待講演をおこなったとともに、国際誌へ発表するための論文執筆をスタートした。最終年度6月中の投稿を予定している。以上から考えて、概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度と本年度で、上記のように本研究の基幹となるレーザー加熱による急速加熱、およびガス圧制御による急激加減圧実験における高速XRD計測基盤システムの開発に成功することが出来た。次年度は今年度までに構築した計測基盤を最大限に活かし、現在の地球深部を構成するような物質、かんらん石や鉄をターゲットとして実験を行う。続いて発展的な研究として、地球や小惑星の原材料であるコンドライトを試料として隕石衝突を模し、加減圧・温度変化を生じさせながら100 GPaまでの高圧下における反応過 程観察を行い、相変化やカイネティクスの解明を目指す。得られた結果・開発内容については国際学会、国際誌に発表予定である。加えて、研究代表者がビームライン担当者として研究開発を行っているSPring-8の高圧構造物性ビームラインBL10XUにおいて、ユーザーへの汎用利用を開始し、代表者の研究のみでなく、電気抵抗測定と組み合わせた相転移挙動 の解明や、材料合成分野における合成過程解明に向けた研究へと展開する。
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Causes of Carryover |
国際情勢による材料不足のため、今年度の高圧セルの導入は困難であった。来年度早々の購入・納品の目途は立っており、研究実施には問題ない。
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