2021 Fiscal Year Research-status Report
Examination of earthquake occurrence condition based on the transition between repeating earthquakes and slow slip
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21K03713
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 直希 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80374908)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 繰り返し地震 / スロー地震 / 応力緩和 / S-net / プレート境界地震 / 条件付き安定 / 粘性緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, プレート境界近傍での応力緩和(粘性緩和)が地震の発生の有無を支配しているという仮説を検証する.そのため,繰り返し地震とスロー地震間の時空間的遷移の特徴を東北沖地震の前後に着目し行う.新たに構築された海域観測点(S-net)を用いたデータ解析では,まず,2018年秋に公開された海域のS-net連続波形データについて,観測機器の姿勢の補正や波形フォーマット変換などのデータ整理を行った.さらにこれを用いてプレート境界で発生するこれまでよりも小さな繰り返し地震までもれなく抽出するために,機械学習を用いた地震検知・震源決定システムの構築に着手した.その結果,短期間のサンプルのデータについて人間の読み取りに基づくものと同程度の数の地震を検出できることが確認できた.また,本年度は繰り返し地震抽出用の高速計算機を導入することで,得られた微小地震から繰り返し地震を抽出するための準備も整えた.さらに,海外の研究協力者(カリフォルニア大学バークレー校の Roland Burgmann氏)のもとで約11ヶ月の共同研究を行うことにより,地球の粘弾性的性質についての知識を深めた.また,繰り返し地震とスロー地震間の時間的遷移が観察された東北沖のプレート境界深部領域の地震の破壊の進展方向についての研究を行い,プレート境界の地震の破壊がプレート境界が浅い方向(updip)に進展する傾向があることを突き止め,論文として出版した(Yoshida et al., EPSL, 2022).これは,今回注目する遷移領域での地震のメカニズムに関して重要な知見と考える.また,研究フィールドである東北沖の地震活動について情報を整理したレビュー論文も出版した(Uchida and Burgmann, Review of Geophys., 2021).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象領域に対するこれまでの研究の総括が,A Decade of Lessons Learned from the 2011 Tohoku‐Oki Earthquakeとして出版につながった.研究開始にあたり,計算機環境の整備,データ変換等が順調にすすむとともに,海外の研究協力者(UC Berkeley Roland Burgmann博士)のもとへの滞在により,周辺分野の知識の習得ができた.本研究では,より小さな地震まで繰り返し地震を抽出するため,海域のケーブル式地震観測網であるS-netの活用が重要である.そこで,気象庁によりS-netを用いた震源決定が開始される前の2020 年 9 月より以前のデータについて,機械学習を用いて地震を検出する技術開発に着手した.その結果,人間とほぼ同等の精度で地震を検知しその震源を決定することに成功した.これにより,これまでより小さな地震まで地震を検知することができるようになり,今後の長期間のデータでの地震の検出および繰り返し地震の抽出に向け一定の目処がついた.また,プレート境界型地震の深部限界付近の地震活動について研究を進め,繰り返し地震とスロー地震間の時間的遷移領域において,地震の破壊の進展方向に系統的な傾向があることを発見し結果を出版した. 以上のように本年度は,地震発生域の時空間変化を調べるにあたって基礎的なデータとなる震源カタログの構築に向けて大きな進歩があったとともに,研究対象領域の地震発生メカニズムについての興味深い研究結果を得た.このことから,研究は計画通りに進んでおり,概ね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
東北沖における機械学習を用いた小地震の検出について,本年度開発したプログラムを気象庁によりS-netが震源決定に活用されていない約3年の期間に適用し,この期間を含めた長期の微小地震の活動を明らかにする.次に,得られた地震カタログと波形データを用い,繰り返し地震を選び出し,繰り返し地震に対する東北沖地震の余効すべりの影響を調べる.このため,繰り返し地震解析用の波形データベースの整備を行うほか,本年度新たに導入した計算機において,繰り返し地震抽出のプログラムが動くように調整する.その結果について,研究協力者(飯沼博士)から提供を受けた測地データに基づく余効すべりのデータを併用し,余効すべりと地震・非地震性すべりの遷移の条件を明らかにしていく.また,得られた地震カタログと研究協力者(和田博士)から提供を受けた温度シミュレーション結果を用い,プレート境界の深さ方向での地震・非地震性すべりの遷移の条件の解明にも挑戦する.コロナ禍の影響や代表者の海外滞在により,昨年度はあまり進められなかった,研究協力者の並木博士との議論や結果の解釈も進め,応力緩和と地震の起こり方の関係についてのモデルの構築に向け研究を推進する.さらに,学会発表や研究集会を通じた情報交換も行い,研究の進展に役立てる.
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Research Products
(10 results)