2021 Fiscal Year Research-status Report
ニューラルネットワークに基づくマントルダイナミクスの物理モデリング
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21K03714
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森重 学 東京大学, 地震研究所, 助教 (70746544)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニューラルネットワーク / マントルダイナミクス / データ科学 / ベイズ推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、データ科学的手法の1つであるニューラルネットワークを用いて偏微分方程式を解く新たな手法 Physics-Informed Neural Networks (以後PINNと呼ぶ)がマントルダイナミクスの物理モデリングに対して適用可能かどうかを明らかにすることである。PINNの大きな特徴の1つは、時間逆行問題を時間進行問題と全く同じように取り扱える点である。本年度は2次元の箱型モデル形状、物性一定、定常状態という最も単純な熱対流の問題に対してPINNの適用可能性を検討した。境界上の点で値を指定する場合には(ディリクレ境界条件)、その条件を解として仮定する関数形に組み込むことで厳密に境界条件が満たされるように工夫した。その結果、熱移動に関する無次元量であるレーリー数が10^4と比較的低い場合(対流が弱い場合)ではPINNによる解と従来の数値計算手法(有限差分法や有限要素法)による解がほぼ一致した。しかしレーリー数が10^5と大きくなる(対流が激しくなる)とこれら2つの解のずれが大きくなった。また他のデータ科学的手法であるベイズ推定がマントルダイナミクスの物理モデリングに対してどの程度有用かの検討も行なった。その結果、ベイズ推定を用いることで、熱伝導率、比熱、熱膨張率といったパラメータが海洋プレートや東北地方沈み込み帯の温度構造に及ぼす影響を、その不確かさまで含めて定量的に予測可能であることを示した。この内容についてまとめた論文1編が国際誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニューラルネットワークではチューニングするべきパラメータの数が多く、しかもチューニングの際の明確な指針も存在しない。最適なパラメータを見つける作業に想定以上に時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在用いているPINNではレーリー数が大きい場合の計算精度が悪いため、例えば流れの計算には従来の数値計算手法を用い温度の計算にのみPINNを用いるなど他の手法を検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で学会全てがオンライン開催となったため。また研究計画の遅れにより、当面は高速でニューラルネットワークを計算するための設備が必要ないため。次年度の学会等参加費、パソコンの購入費用として使用する。
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Research Products
(3 results)