2022 Fiscal Year Research-status Report
地震波形インバージョンによる内核境界近傍の詳細構造推定
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21K03716
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河合 研志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20432007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 裕輝 東京工業大学, 理学院, 研究員 (70897785) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 波形インバージョン / 核マントル境界 / 巨大S波低速度異常領域 / 可変グリッド / 最下部マントル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最近公開されてきているアフリカ大陸の地震波観測網のデータを活用し、そのデータから情報を余すことなく引き出すことができる波形インバージョンを行うことで、アフリカLLSVP(巨大S波低速度異常領域)西側境界域にあたる南大西洋下のD″領域(最下部マントル)の詳細な3次元S波速度構造を推定した。使用した波形データは深発およびやや深発地震からの地震波を震央距離70-100度で観測したおよそ3600本の広帯域地震波形の水平トランスバース成分であり、IRISから取得した。0.005-0.1 Hzの周波数帯のフィルターをかけ、SおよびScSフェーズを含む時間窓を使用した。限られたデータの中で可能な限り高い解像度を維持したままインバージョン結果を安定させるために、可変グリッドインバージョンを行うための手法を開発して適用した。
得られた3次元S波速度構造モデルには、ブラジルの下に500 kmスケールの高速度域が複数みられた他、南大西洋下のコア-マントル境界(CMB)直上に複数の小スケール(直径500 km程度)の低速度域が確認された。このうちブラジル下の高速度域は過去のファラロンプレートの沈み込み帯の位置に沿って複数並んでいることから、ファラロンスラブがD″領域に到達するまでの間に幾つかの部分に柱状に分裂したものと考えられる。一方、CMB直上の低速度域は従来の全マントルトモグラフィーでLLSVPとされてきた領域の内部だけでなくその西側にも存在しているが、LLSVPがCMB直上で薄い層(厚さ200 km程度)として西側に伸びているとするフォワードモデリングの研究(Ni & Helmberger 2003)と概ね整合的である。南大西洋下のCMB直上に複数の小スケールの低速度域が確認されたことから、LLSVPは細い上昇流の集合体であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分担者が科研費応募資格を喪失したため削除したことに伴い、分担者の役割分担分に関してやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
分担者削除に伴い、昨年度から研究代表者が主催する研究室に所属する大学院生に研究協力者として参加してもらっている。削除する分担者の役割はソフトウェア開発およびデータ解析であったが、研究代表者の統括のもと研究協力者に担当してもらっている。最近公開されてきているアフリカ大陸の地震波観測網のデータを活用し地球核の構造推定を目指していたが、その過程でそれらのデータを用いて既往研究では推定が難しかった南半球の最下部マントルの詳細な構造推定が可能であることがわかった。また、地球核の構造に感度を持つ地震波はマントルもサンプルし、地球核の地震波速度構造推定のためにはマントルの正確な構造の情報が欠かせないことから、昨年度は観測波形の水平1成分を用いて南半球の最下部マントルのS波速度構造推定を行った。最終年度は観測波形3成分を用いて最下部マントルおよび核の一括構造推定を目指す。
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Causes of Carryover |
円安のため希望する容量の計算サーバー兼ストレージの購入ができなかった。次年度予算と合算して購入するため、次年度使用額が生じた。2023年度の8月ごろに納品される予定である。
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