2021 Fiscal Year Research-status Report
Precise determination of plate structure beneath Kii Peninsula by full waveform inversion of receiver functions
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21K03722
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澁谷 拓郎 京都大学, 防災研究所, 教授 (70187417)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 固体地球物理学 / 地震 / 自然災害 / ハイパフォーマンス・コンピューティング / フルウェーブインバージョン / レシーバ関数 / 3次元地震波速度構造 / 南海トラフ巨大地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、紀伊半島において10年間にわたり行った臨時観測等で取得した地震波形データから得た多数のレシーバ関数を用いて、フルウェーブインバージョンを実行し、紀伊半島下に沈み込むフィリピン海プレートの上面やその上方に位置する大陸モホ面の形状とそれらを含む深さ100kmまでの領域の地震波速度の3次元構造を従来の解析手法の数分の1の分解能で推定することを試みる。それにより、南海トラフ巨大地震の規模や強震動の予測の高度化とその背景にあるフィリピン海プレートの形状やプレートから放出された流体の挙動や流体とスロー地震の関係などの基礎的な研究の深化に貢献することを目的とする。 令和3年度は、ダウンスケールしたフルウェーブインバージョンを行うためのワークステーションを選定・購入した。ダウンスケールするといえども、相当に大規模な計算が必要となるので、24コア・48スレッドのCPU×2個と192GBのメモリを搭載したものとした。加えて、並列計算が可能で、実行相度が早いコンパイラを購入し、上記のワークステーションにインストールした。さらに、地震波形の処理や解析結果の表示等に必要となるソフトウェアをインストールした。 フルウェーブインバージョンのデータとなるレシーバ関数については、10年間の観測期間中に得られた波形を確認し、フルウェーブインバージョンで使用するものの選別を行った。これまでの水平成層構造を仮定した解析では、radial成分に重きを置いていたが、フルウェーブインバージョンではtransverse成分も使用するので、両成分の波形を確認する必要があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フルウェーブインバージョンで用いるレシーバ関数の選別において、radial成分だけでなく、transverse成分も確認する必要があり、この作業に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度には、地震波走時トモグラフィによって得られた3次元速度構造モデル(澁谷・平原, 2018)等を参考にして作成した3次元速度構造モデルに対して、SEM-DSMハイブリッド法により計算された理論波形からレシーバ関数を計算するプログラムを作成する。 次に、レシーバ関数の観測波形と理論波形の残差が最小となるように、観測方程式を線形化し、iterativeに解いて、3次元速度構造モデルを改善するフルウェーブインバージョンのプログラムを作成する。 本研究のまとめとして、得られた3次元速度構造モデルから、フィリピン海プレートの上面や大陸モホ面等の形状を求める。また、低速度異常域の分布からプレートから放出された流体の挙動を推察し、スロー地震との関係や南海トラフ巨大地震の震源断層であるプレート境界面の状態について議論する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は研究の進捗が遅れて、学会発表や英文校閲ができなかったので、当初計画より少しスペックの高い大規模計算用のワークステーションを購入した。この際に少額の残額が生じ、次年度に繰り越すこととした。 令和4年度には、10月に札幌市で開催される地震学会で発表するための投稿料・参加費・旅費を支出予定である。また、論文原稿の英文校閲も予定している。
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