2023 Fiscal Year Research-status Report
地殻内の歪みエネルギーの可視化による内陸地震発生メカニズムの解明
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21K03729
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
野田 朱美 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 主任研究官 (80793992)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 歪みエネルギー / 内陸地震 / GNSSデータ / 非弾性歪み |
Outline of Annual Research Achievements |
地殻内の応力変化の空間分布をモデル化するためには、その原因である地殻内の非弾性変形の3次元空間分布を適切に推定する必要がある。この目的のため、昨年度までにGNSS変位速度データから非弾性歪み速度の分布を地殻浅部と深部に分離して推定するインバージョン手法を開発し、新潟-神戸歪み集中帯の観測データに適用した。その結果、地殻浅部と深部で異なる空間的特徴を持つ非弾性歪み速度分布を得た。この推定モデルの妥当性検証のため、今年度、地震波速度構造・減衰構造、過去の地震活動との比較を行った。本研究で得られた非弾性歪み速度分布は、特にP波減衰構造の高減衰域と良く対応することが分かった。また、大きな非弾性歪み速度が推定された領域では、2014年長野県北部地震(M6.7)のほか、18~19世紀にかけてマグニチュード7クラスの地震が発生したと推定されている。震源モデルの統計的性質に基づけば、この規模の地震は本研究のモデルの解像度を下回る空間スケールの応力蓄積に起因する可能性があるため、今後さらに空間解像度を改善するための技術開発が必要である。 アセノスフェアの粘性緩和がインバージョン結果に及ぼす影響を検討するため、非弾性歪みが地殻深部まで一律に分布したモデルによって粘性緩和後の地殻変動を模擬し、応答関数を計算し直した。これを用いて従来と同じ方法でインバージョン解析を行った結果、応答関数の違いは非弾性変形の絶対値に多少影響するものの、非弾性歪み分布の空間パターンへの影響は小さいことを確認した。 歪みエネルギー蓄積と大地震発生の関係を明らかにする目的で、地震発生シナリオ構築手法の開発を行ってきた。誤差を含む観測データの情報を、最終成果である地震発生ポテンシャルの不確定性にどのように反映させるか、その方法論について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で新たに開発した非弾性歪み解析手法による新潟-神戸歪み集中帯の新たな変形構造モデルに関しては、査読論文誌に投稿中である。論文の査読プロセスにおいて、様々な角度から提案モデルの妥当性を補強する検討を行うことができた。引き続き、地殻内への歪みエネルギー蓄積を定量評価するための手法検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で新たに提案した変形構造モデルに基づいて、応力変化および歪みエネルギー蓄積を計算するための力学モデルの構築を進める。この際、モデルの柔軟性及び計算効率を考慮して検討する。インバージョン解析における誤差範囲を、地震発生ポテンシャルの不確定性評価に反映させる方法について検討を進める。
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Causes of Carryover |
現在査読中の論文の掲載料として使用する予定だが、査読に時間がかかっているため次年度に繰り越す。
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Research Products
(3 results)