2022 Fiscal Year Research-status Report
化石複眼の構造-視覚機能の成熟プロセスの解明:視覚特性の進化多様性
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21K03736
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 雄太郎 静岡大学, 理学部, 准教授 (50345807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生田 領野 静岡大学, 理学部, 准教授 (60377984)
椎野 勇太 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60635134) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 三葉虫 / 複眼視覚 / 視野範囲 / 形態視 / 動体視 |
Outline of Annual Research Achievements |
初期古生代に高い種多様化を達成した絶滅節足動物・三葉虫類において、複眼視覚特性の観点から多様化の生体生理的な理由を見出すことを目的としている。古生態的に大きく異なる四種を選定し、これらの化石複眼について、高精度のマイクロ形態解析と数理解析によって、視野特性を表す構造的特徴を解析している. 解析手法については、複眼の表面形状をスプライン関数によって近似する手法を導入し、検討対象のオルドビス紀三葉虫の4種のうち3種については解析が終了し、残り1種は解析前の準備が完了した。 視力(コントラスト感度)の尺度となる空間周波数(CPD)は、遠洋遊泳性種P. galicaでは0.4、礁生の底性種E. laticaudaでは0.37、礁生の底性定住性種S.oviformisにおいても0.4であった.この結果は、特徴的な行動生態パターンが備わった三葉虫種がおしなべて、周囲状況の視認を比較的高いレベルで行っていたことを強く示唆している.一方で、検討対象種における行動生態の異質性は、感度(受光能力)に強く関係する個眼サイズの違いに反映されていることが明らかとなった.個眼数と平均個眼直径の関係は、P. galicaでは2000強:およそ140μm、E. laticaudaでは6000弱:およそ100μm、S.oviformisでは3000前後:およそ50μm弱であり、感度の相違はP. galicaがE. laticaudaの2倍に、S.oviformisはE. laticaudaの1/4倍となる.およそ同等のCPD値ながら、高感度であれば視認効率はより高く、低感度であれば視認効率はより低いため、行動生態的特性に見合った視覚特性となっていることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロ形態解析・数理解析の検討プロトコルによって、視覚特性に強く関係する空間分解能 (単位立方角あたりの個眼視軸数)と感度(個眼サイズ)について、各複眼試料で網羅的に得ることができている。これによって、視覚特性を一義的な尺度で比較検討できるとともに、視覚特性につながる多元的な尺度それぞれでの比較も行うことができている. マイクロ形態解析については丹念な前準備と慎重な検討が必要なためある程度の熟練を要するが、この作業を重ねてきたことで、効率化も計れている.
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Strategy for Future Research Activity |
検討対象4種のうち残り1種のN. armadilloは大陸縁海斜面が生息場であり、他の陸棚上に生息していた3種とは生息深度が異なり、明らかに生息深度が深いことが知られる.N. armadilloの複眼は他3種に比べて著しく大きく、個眼サイズが比較的大きめでこれがおよそ4500個で構成される. 今後はN. armadilloの複眼について、マイクロ形態解析・数理解析の検討プロトコルを適用して結果を得てゆき、生息深度の相違を含めた視覚特性の議論を行ってゆく.
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Research Products
(3 results)