2023 Fiscal Year Research-status Report
Origin and evolution of submarine cave-dwellers based on fossil evidence
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21K03741
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
芳賀 拓真 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (30728233)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 無脊椎動物化石 / 化石群集 / 生きた化石 / 固有生物 / 最古 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年次目には,南大東島北部において,洞窟洞窟由来の海底洞窟性生物化石に加えて,洞窟外の環境に生息していた大型化石を豊富に含む洞窟入口周辺の堆積物と化石群に特に着目して調査と分析を行った。これまでは海底洞窟奥の環境の指標である着色部位(=レインボーストーン)に着目しており,またこうした洞窟入口付近の堆積物は周辺の石灰岩と区別がつき難いため看過してしまっていたが,南大東島北部ではこうした堆積物の露頭が複数分布していることが明らかとなった。これらの化石の剖出及び鑑定作業を進め,貝類・魚類等の大型化石に基づき古環境を推定したところ,海底洞窟の開口部は水深10~30 mにあったと見積もられた。 予備調査に留まっていた北大東島で網羅的な現地調査を行った。北大東島では,当時の断層に沿って点々と分布する小さな空隙に海底洞窟的な微小化石を産するのみで,南大東島と比することのできる大規模な海底洞窟堆積物と化石群は皆無であることが示された。種数は少なく,また南大東島との種の共通性も僅かであり,洞窟系の小ささが制限要因と言えよう。南大東島ほど明確ではないものの,北大東島の「海底洞窟的な堆積物」においても堆積相より一連の海進・海退のサイクルが確認された。 また,南大東島の海底洞窟化石群に含まれるアマダレガイといった特徴的な貝類が近年発見された沖縄県北部・伊江島の現世海底洞窟を調査した。その結果,アマダレガイの幼殻はじめ従来知られていなかった新規試料と新知見が多数得られ,解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画より1年分の現地調査が実行できていない状況であるが,2023年度には南大東島及び北大東島での現地調査を行い,不可欠な量の試料と地質データを収集することができた。いっぽう,化石の分離の難しさのため標本・試料作成に想定以上に時間がかかり,テーマ1「海底洞窟の変遷と生物群集の消長」および テーマ4「海底洞窟生物群の起源」が当初計画のペースで進められていない。種々の物理的困難は排除し難いことから,テーマ2「新たなる現地性海底洞窟化石群の探索」は国内の現世海底洞窟を対象にするのみに縮小して研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
調査できた回数が少ないものの,これまでの現地調査により,研究遂行に必要となる最低限の資料を収集できた。新たに採取できた試料とデータをもとにして,群集解析および古環境復元に重点をおいて研究を進め,原稿作成にも着手する。2023年度に試料不良のため解析できなかった年代測定を,新たな歯化石を用いてリトライし,堆積年代の精度を高める。また,2023年度の調査期間中に荒天のため達成できなかったいくつかの露頭の柱状図作成のため南大東島を再訪する必要があり,これを夏季に実行しなくてはならない。 フィリピンにおける調査を中止する代わりに2023年度から新たに開始した現世海底洞窟調査は,本研究を深化させるものとして重要性が高い。そのため,2024年度の中頃にこれを実施するべく許可申請や関係先との調整を行っている。2024年度の調査では海底洞窟奥部を探索する計画であるため,安全かつ効果的に調査を行うため,目下特殊機材の作成中である。 Noda (2006)により腕足類として記載されたOoagariaのタイプシリーズが南大東村教育委員会で再発見されたのは,予期せぬ成果である。タイプを検討した限り,二枚貝として解釈すべきであり,標本のキュレーション含め早急な対処を行う。 このほか,2024年度に申請者の所属機関で実施する企画展で,本課題の成果の一部を展示する計画である。
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Causes of Carryover |
本研究は年代決定が重要な鍵のひとつであるが微化石は決定打に欠ける。そこで,偶然得られた歯化石に基づきルビジウム-ストロンチウム法による年代測定を行うべく準備を進めてきた。しかし,調整した試料は走査型電子顕微鏡観察を行ったところ変質が見られ,期待される結果が得られないと予想されたことから,依頼分析を中止したため次年度使用額が生じている。2023年度中には別試料の剖出を完了しており,速やかに外部機関による年代測定を行う。 本研究の深化のためには,南大東島の海底洞窟化石群とよく比較できる沖縄の現世海底洞窟調査を行う必要がある。天候に影響を受けることなく傭船・潜水できる時期は限られるため,5月あるいは9月に,伊江島及び沖縄本島西部で現世海底洞窟の潜水調査を実施する予定である。次年度使用額は年代測定費のほか,潜水調査の経費が含まれる。
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