2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K03742
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
伊規須 素子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 特別研究員(RPD) (00518285)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 安定炭素同位体比 / 最古堆積岩 / グラファイト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、カナダ・ラブラドル地域から産出した約39.5億年前の堆積岩に保存されるグラファイトが生物起源であるか否かを再評価することを目的とする。そのために、個々のグラファイト粒子に着目し、二次元高分解能二次イオン質量分析法(NanoSIMS)でその炭素同位体比を明らかにする。具体的には、基質鉱物とグラファイトの空間分布およびグラファイトの熟成度を考慮し、真に初生的なグラファイトが有する炭素同位体比を明らかにすることを目指した。 今年度は、測定試料として泥質岩1試料、礫岩2試料の薄片を新たに作成し、光学顕微鏡観察、顕微ラマン分光分析を行い、NanoSIMS分析の対象とするグラファイトを選定した。そしてNanoSIMS分析を行い、グラファイト17粒子から炭素同位体比を得た。NanoSIMS分析の結果、礫岩においては、鉱物粒間に分布するグラファイトの炭素同位体比は不均質で、基本的に先行研究(Tashiro et al., 2017)で報告された全岩のそれより重い値だった。光学顕微鏡観察、顕微ラマン分光分析ではガーネットに包有されたグラファイトも複数確認したが、いずれもサイズが小さく、NanoSIMS分析のプレスパッタリング中に炭素の信号が検出されなくなった。そのため、ガーネットに包有されたグラファイトの炭素同位体比を得ることはできなかった。泥質岩においては、ガーネットに包有されたグラファイトの炭素同位体比は不均質で、全岩のそれより重い値を示した。以上のことから、泥質岩・礫岩ともに全岩組成より重い炭素同位体比を持つ起源物質が存在すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
特に2022年度前半は新型コロナウイルス感染症の流行状況が落ち着かず、外部機関への出張を極力避けたことと、在宅勤務も困難な時期があったこと、また想定していたよりも岩石試料が緻密で硬く加工するのに時間がかかってしまったことなどのため、全体的に計画に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得た結果をとりまとめる。追加測定の必要がある試料について追加測定を行う。炭素同位体比が得られた試料について基質鉱物の記載を詳細に行う。成果を学会・学術論文等で発表する。
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Causes of Carryover |
前述のとおり、全体的に計画に遅れが生じ、学会発表などを行うことができなかった。外部機関への出張を極力避けた。そのため旅費と、学会参加費等のその他に未使用額が生じた。 今年度から外部機関においてNanoSIMS分析を行う際に利用料が発生することになったので、未使用分は追加測定のための利用料・旅費や、成果発表のための英文校正費に使用する。
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