2022 Fiscal Year Research-status Report
Mechanical evaluation for articular cartilage based on molecular and crystal scaled structural analysis by Raman imaging
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21K03744
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東藤 正浩 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10314402)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生物・生体工学 / 生体分子 / 医療・福祉 / 関節軟骨 / ラマン分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
関節軟骨の疾患である変形性関節症(Osteoarthritis: OA)は,日々の生活や外傷などによる過剰な力学的負荷が原因で発症する.高齢化が進む中で,この病態を十分に把握し,適切な診断を行うことが求められている.ラマン分光法は,光と分子振動の相互効果を利用した手法である.水分の影響を受けにくく,有機・無機両成分の成分解析を非侵襲的に解析できるという特徴をもつ.ラマンスペクトルには,測定対象の分子の種類,振動のモードがピークとして表れる.また,応力により分子間結合の強さが変化することで振動数が変化することから, ラマンシフトも変化する.本研究では,ラマンイメージングによる分子・結晶スケール構造解析に基づく関節軟骨力学機能評価法を目的とした.軟骨基質内のコラーゲン,プロテオグリカン,ミネラル結晶レベルのラマン分光構造解析手法を確立するため,各成分の力学挙動観察を可能とする圧縮負荷時ラマンイメージングによる関節軟骨分子スケール力学解析手法の開発を行った.まず,関節軟骨表面から圧縮負荷をかけ、その表面からラマンシフトを観察することを目的とし,軟骨の圧縮方向からラマンスペクトルを観察可能な装置を新たに作製した.試験片は作動実験用のメラニンスポンジおよび本試験用のブタ膝関節軟骨とした.また変性軟骨を再現するためにトリプシン溶液で変性させて試料を作製した.また計測結果の解析時間の低減のため,ラマンスペクトルからピーク情報を自動的に抽出するプログラムを作成し,大幅な解析時間短縮を実現した.本手法により,軟骨の成分の情報のみならず,その構造状態も分析することが可能あること,また健常および変性軟骨のラマンスペクトルの差を観察することが可能となり,軟骨変性の診断の可能性を確認することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は,令和3年度に構築したラマン分光イメージングによる関節軟骨の分子スケール構造解析手法をもとに,変性軟骨試料を作製し,軟骨の変性状態評価への可能性について検討を行った. 関節軟骨表面から圧縮負荷をかけ、その表面からラマンシフトを観察することを目的とし,軟骨の圧縮方向からラマンスペクトルを観察可能な装置を新たに作製した.試験片は作動実験用のメラニンスポンジおよび本試験用のブタ膝関節軟骨とした.また変性軟骨を再現するためにトリプシン溶液で変性させて試料を作製した.また計測結果の解析時間の低減のため,ラマンスペクトルからピーク情報を自動的に抽出するプログラムを作成し,大幅な解析時間短縮を実現した.本手法により,軟骨の成分の情報のみならず,その構造状態も分析することが可能あること,また健常および変性軟骨のラマンスペクトルの差を観察することが可能となり,軟骨変性の診断の可能性を確認することができた. 予定では,より臨床応用に近いガラスインデンタの作製を行う予定であったが,解析手法の改善に要したため,今後の課題とするが,全体としてはおおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度では,関節内診断を想定した圧縮負荷時ラマン分光解析による関節軟骨分子スケール力学解析手法の開発を目的とする.レーザー透過可能な円柱状のガラス製インデンタ(直径3mm)を開発し,ラマン顕微鏡対物レンズ先端に組み合わせ,圧縮負荷時の関節軟骨のラマン分光計測を実現する.具体的には下記の検討を行う. 荷重に応じた微視構造変化とともに,関節液が基質内を移動し,潤滑機能を高めているため,構成成分の力学挙動特性は軟骨機能評価に重要な情報となる.レーザー透過可能な円柱状のガラス製インデンタ(直径3mm)との組み合わせにより,圧縮負荷時の関節軟骨ラマン分光計測を実現する.レンズより照射されたレーザーはインデンタガラス底面を透過し,接触した軟骨表面に照射される.・内部で生じたラマン散乱を再びレンズを介して分光し,ラマンスペクトルを得て,力学的異方性を考慮した力学応答測定を行う.選定したラマン計測条件に基づき,圧縮負荷時のラマンスペクトルを計測し,圧縮負荷量と各成分のラマンピークパラメータの相関を調査する. 測定対象はウサギ膝関節とし,令和4年度に作製した変性軟骨および若年(年齢6カ月)および老年(年齢5年)と年齢の異なる加齢膝試料を採取する.加齢および変性膝軟骨試料のラマン分光力学挙動を計測し,相関関係を明らかにし,関節軟骨力学的機能評価指標を提案する.
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Causes of Carryover |
予定では,若年(年齢6カ月)および老年(年齢5年)と年齢の異なるウサギ加齢膝試料を採取し,解析する予定であったが,本課題の進捗状況より本検討を今後の課題とすることとしたため,残額が生じた.本年度,本実験に使用予定であった動物試料購入費,および事件消耗品費として使用する計画である.
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