2022 Fiscal Year Research-status Report
粘弾性・粘塑性解析に基づく炭素繊維強化熱可塑性樹脂の強度解析
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21K03753
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂上 賢一 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40383509)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 複合材料 / 熱可塑性樹脂 / 粘弾性 / 粘塑性 / 逆解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)の力学挙動・破壊挙動を熱可塑性樹脂の本質的な特性である粘弾性・粘塑性に基づいてシミュレーション可能な数値解析法を確立することである. 本年度の研究では,ポリアミド6(PA6)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)の粘弾性・粘塑性挙動からSchapery非線形粘弾性構成式と,引張降伏応力と圧縮降伏応力が異なる塑性非対称性と圧縮性塑性挙動が再現可能な拡張Drucker-Prager降伏条件または粘塑性力学モデルに基づき,粘弾性特性と塑性または粘塑性特性を同定した.その結果,非線形粘弾性と塑性を組み合わせたモデルが熱可塑性樹脂の時間依存力学挙動を最もよく再現できることを明らかにした. また,新たな熱可塑性樹脂の力学特性の評価方法として,一方向強化熱可塑性樹脂の材料試験結果に対してマイクロメカニクスに基づく逆解析法を適用することによって熱可塑性樹脂の非線形力学挙動を推定する方法を構築した.これにより,マトリクス樹脂単体の材料試験を実施せずに一方向強化材の試験のみによって有限要素解析に必要な樹脂の力学特性を評価できるようになった.さらに,一方向強化熱可塑性樹脂の繊維破断時の応力負担モデル(Global Load Shearingモデル)に推定された熱可塑性樹脂の力学挙動を用いると,一方向強化熱可塑性樹脂の強度の温度依存性を推定できることを示した.また,このGlobal Load Shearingモデルを改良することにより,繊維の初期欠陥に基づく一方向強化熱可塑性樹脂の強度のばらつきを予測できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,1年目と2年目に(1)有限要素解析に用いるPA6の粘弾性・粘塑性特性の評価,2年目と3年目に(2)PA6の力学特性を用いたCF/PA6のマイクロスケール解析,(3)CF/PA6一方向強材の異方性粘弾性・粘塑性特性マクロスケール解析を実施する計画である. 上記(1)に関して,昨年度実施した材料試験を通じた粘弾性・粘塑性特性の評価に加えて,今年度,一方向強化材の材料試験結果からマイクロメカニクス手法による逆解析によってマトリクス樹脂の力学特性を取得する方法を構築した.したがって,当初の予定通り計画通り研究が進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)のユニットセル有限要素解析(マイクロスケール解析),一方向強化材の異方性粘弾性・粘塑性特性解析(マクロスケール解析)を実施する. マイクロスケール解析では,繊維1本の3次元ユニットセルモデルを用いた有限要素解析によりCFRTPの異方性粘弾性・粘塑性特性を推定する.またマクロシミュレーションに必要な異方性粘弾性・粘塑性有限要素解析のサブルーチンを開発する.開発したサブルーチンを使用して,0°,45°,90°方向の引張試験を模擬したCFRTPの引張挙動のシミュレーションを行う. さらに,マイクロメカニクス手法およびGlobal Load Shearingモデルが一方向強化熱可塑性樹脂の強度予測に有効であることが示されたため,この手法を発展させ一方向強化熱可塑性樹脂の長期寿命予測法に発展させる.
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Causes of Carryover |
予算残額が少ないため,翌年度分と合算した方が予算を無駄なく使用できると判断したため. 翌年度に使用を予定している材料の購入費用,ソフトウェアライセンス使用料,学会発表等の旅費などの用途で使用する.
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