2023 Fiscal Year Research-status Report
The Smallest Fabrication of Ultra Fine Wires by using Wiredrawing Technique: Computational Mechanics Approach
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21K03759
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
齋藤 賢一 関西大学, システム理工学部, 教授 (90294032)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 伸線加工 / 分子動力学 / 計算力学 / 塑性変形 / マイクロ・ナノワイヤ / 金属材料 / マルチスケール解析 / 結晶塑性FEM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、棒・線(ワイヤ)に対する伸線加工について、計算力学シミュレーションを用いて、加工原理の追求、およびナノレベルの材料の構造・特性の変化を調べる方法論の構築を行っている。今後の微細なワイヤ形状材料の製造への応用を目指す。第3年度は、主に以下の各内容を遂行した。 (1)原子レベル解析によるナノサイズワイヤの伸線製造可能性の検討:第2年度(前年度)から、難加工材として知られる純マグネシウム(Mg)ワイヤに対するナノサイズで伸線加工の可能性を検討してきた。本年度は、これまでの単結晶モデルに加え、多結晶モデルも作成した。共通の加工方式として円錐型ダイスの中に材料を通して塑性変形させる分子動力学(MD)シミュレーションを行っている。多結晶モデルでは、結晶方位の変化を解析できるNeo-Eulerianマップと呼ばれる方法を新に導入した。また結晶粒径を2~40nmの間で変化させ、双晶または転位の発生や原子ひずみの解析を行い、欠陥の移動や集中により誘起される結晶粒微細化の過程を見出した。変形メカニズムは、7nm以下の小粒径では粒界すべりが支配的であるが、10~20nmの中粒径では双晶が加わり、さらに25nm以上の大粒径ではさらに底面すべりが加わることが分かった。 (2) 超微細ステンレスワイヤの硬化メカニズムに関する検討:ステンレスワイヤの超微細伸線加工に関して、結晶粒ごとに定められるすべり系の動的な挙動を陽的に表現できる結晶塑性FEM(CPFEM)による解析の導入を進めた。伸線材の各部位を想定した代表体積要素(RVE)に対して、結晶粒サイズや荷重条件および基本的な設定値の影響などを検討した。また、マルチスケール的な計算手法間の連携を目指し、まず、MD計算によってステンレス鋼を想定したオーステナイト系のFe-Cr合金に対する臨界せん断応力を同定し、CPFEMへの適用を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の開始以前から、研究期間の第1年度と第2年度において、対象とする伸線加工に関する研究は進捗した。とくに、資料収集、計算ソフトウェアやコンピュータ機器の整備と運用を継続的に行ってきた。また、当初、最終年度として計画していた今期(第3年度)には、新たに計算機器を追加導入して大規模計算や計算条件の追加、新しいポスト処理や可視化方法などを検討した。当初の研究計画に沿って、各小テーマについて、研究成果が多く出ている。しかし、本研究テーマ全体に対してのまとめが十分に行うに至っておらず、とくに対外発表による議論が限定的であり、総合的な評価がまだ足りていない。そのため、第3年度末に期間延長を申請し、追加の第4年度として、対外発表(海外での国際会議での成果発表)を計画している。以上から、第1~3年度と追加期間において本研究テーマの当初の目的に沿った形での研究が遂行できている(できる予定である)と考えられ、研究のまとめが進むことで本研究テーマを元にの新しい研究展開が可能になっていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
第1および第2年度には、本研究テーマの根幹となる伸線加工原理の追求と計算機シミュレーションに基づく微視的な解析手法の構築が、各種材料(純鉄・ステンレス・マグネシウム)について行われた。また、関連して研究室で行っているバイオ素材系ワイヤ構造(セルロース、コラーゲン、(第2年度からの)スパイダーシルク)の計算モデル構築と特性評価も含め、ナノサイズのワイヤ構造の機械的性質とその加工法に関する総体的な知見が積み重ねられた。そして、研究室内では、主なる研究手法である有限要素法(FEM)および分子動力学(MD)などの効率的利用の体制が構築され、それらの具体的な利用のノウハウも数多く蓄積されるに至った。 そこで、当初の最終年度にあたる第3年度に、さらに大規模かつ精密な計算モデルの作成と実行を進めた。とくに金属線の加工解析では、MDやFEMおよび結晶塑性理論を組み合わせた、より具体的なマルチスケール解析への礎が固められた。期間延長の申請が認められており、追加の第4年度にはこれまでの様々な成果について有機的なまとめを行い、伸線加工原理、各種素材の伸線限界や微視的挙動の理解、新規材料における伸線加工の可能性についての結論を得て、さらに新しい展開(新規テーマ申請)へと進める予定である。
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Causes of Carryover |
第3年度は、第1年度に導入した機械装置(計算サーバー)に加えて、第2年度で購入を延期していた新しい計算機の導入を行い、計算処理を質・量ともに増大させることが可能になり、研究がさらに進展した。しかし、計画当初には想定をしていなかった新しい処理方法に伴う解析量や検討事項の増加が生じた。そのため、第3年度の終了時に研究費使用の期間延長を申請し、認められた。よって、追加となる第4年度が実質的な最終年度となっており、そこで、本研究テーマの成果公表の機会を多く設定し、最終的に論文発表の形で本研究テーマとしては完結する予定である。
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Research Products
(28 results)