2021 Fiscal Year Research-status Report
積層クラッドを用いたアルミナイドとシリサイドの形成に及ぼす異種金属箔の影響の解明
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21K03762
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
新野邊 幸市 松江工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (20342545)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 金属間化合物 / 耐熱材料 / クラッド / 熱処理 / 反応拡散 / アルミナイド / シリサイド |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代の耐熱材料としてアルミナイドやシリサイドなど耐酸化性を有する金属間化合物が注目されている。しかしながら、塑性加工性に乏しいことから、金属間化合物の素材となる2種類の金属素板を積層させて、熱処理のみにより金属間化合物を作製するプロセスを考案している。本研究では、異種金属となる第3元素からなる箔を追加して積層することで、アルミナイドやシリサイドの形成過程に及ぼす影響を調査している。 第1期となるR03年度には、Nb-Al系およびMo-Al系アルミナイドの形成過程に及ぼす異種金属箔の影響を調査した。これらのアルミナイドは既存の耐熱合金に比べて融点が高いことから、超高融点材料として期待されている。Nb-Al系アルミナイドの作製時には、Ti, Fe, Ni, Moの異種金属箔を選択した。これをAlの融点以上となる700℃で加熱し、保持時間を最長4日間まで変化させて、組織の形成過程を調査した。この結果、Ti箔もしくはMo箔を積層した3元系の場合に限り、Nb-Alの2元系と異なる挙動が認められた。すなわち、Nb基材と溶融したAlと異種金属箔の間で反応拡散が起こり、粒径100nmオーダーの微細粒子からなるアルミナイドが形成され、この微細粒子はNb基材との密着性にも優れることがわかった。700℃で数日間ほど保持しても微細粒子は粒子の形態を保持しており、粒子間にボイドがほとんど認められない。Ti箔を積層させた試料に対して元素分析を行ったところ、微細粒子はTi-75at%Alの基本組成からなるアルミナイドで、Tiの数at%がNbに置換されていることがわかった。一方で、Mo-Alアルミナイドに対しては、Tiを異種金属箔として積層したが、微細粒子の形成は認められなかった。この要因として、Mo-Al系アルミナイドでは反応速度が速いため、異種金属箔を構成する第3元素が影響しないことを考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Nb-Al系アルミナイドの形成に及ぼす異種金属箔の影響を調査し、Ti箔とMo箔を積層すると、微細粒子の形成が起こることが見出された。一方で、Ni箔やFe箔を積層した場合では加熱条件を変化させても、微細粒子の形成が起こらないことが見出された。以上のことから、微細粒子の形成は加熱条件には影響せず、異種金属箔を構成する金属元素に特有な挙動であることが判明した。一方で、Mo-Al系アルミナイドの形成では、2元系であるMo-Al系アルミナイドの反応速度がNb-Al系アルミナイドに比べてきわめて速いため、第3元素が反応に影響を及ぼす前に、2元系のMo-Al系アルミナイドが形成することが分かった。以上の成果から、異種金属箔の種類による影響は概ね把握できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
第1期に目標とした、Nb-Al系およびMo-Al系アルミナイドの形成過程に及ぼす異種金属箔の影響は把握できたと考える。そこで、第2期にはTi-Al系およびFe-Al系のアルミナイドの形成過程に及ぼす異種金属箔の影響を調査する。Ti-Al系およびFe-Al系アルミナイドの融点は超高融点材料より低いものの、軽量耐熱材料として期待されることから、より広い範囲での実用化が期待される。第1期と同様な製造プロセスを適用して、異種金属箔の種類が及ぼす影響を明らかにする。さらに、異種金属箔には純金属を用いたが、ステンレス鋼などの市販されている合金箔を用意して、4元系や5元系など多元化の影響を新たに調査する。 市販されている厚さ0.5mmのTi、Fe、Al板を10*20mm程度にカットして、厚さ0.005から0.02mm程度からなる異種金属箔も同様なサイズとする。Ti-Al系ではNi, Nb, Feに加えて、SUS430やSUS304などのステンレス鋼も選択する。Fe-Al系でもTi, Niに加えて、ステンレス鋼を選択する。これらを交互に積層したのちに、酸化防止のためにTa箔で包み込み、ステンレス鋼製のクリップで固定する。加熱温度はAlの融点近傍の650℃から900℃までとして、所定の時間保持して、各加熱温度におけるアルミナイドの形成過程を調査する。組織観察には光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用い、エネルギー分散型特性エックス線分析装置により元素分析を行う。
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Causes of Carryover |
本研究で使用する研磨用品や熱処理用品についても国内外の事情により品薄状態となっており、調達ができていない。現在のところ、研究の遂行に問題はないが、調達計画を早めに立てることで、物品不足に対応することを計画している。
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