2021 Fiscal Year Research-status Report
ナノ力学にもとづく金属系水素分離膜の破壊現象解明と耐久性向上の検討
Project/Area Number |
21K03764
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
西村 憲治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20357718)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 分子動力学法 / 水素脆化 / 水素拡散 / 水素化物 / 転位 / ナノ力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素社会の実現に向けて、水素を利用するための機器の開発が国内外で進められている。水素利用機器の安全性において、水素を吸収することにより材料の強度が低下する水素脆化は長年の課題である。本研究の目的は、水素化物に着目してPd合金の水素脆化メカニズムを明らかにすることである。その成果をもとに、脆化を抑制する方法としてナノ多結晶化を提案し、その有効性を検証する。 研究実施計画として、初年度は単結晶バルク材の引張り試験により水素化物が破壊現象におよぼす影響を評価する。次年度以降、ナノ多結晶Pd合金バルク材の水素脆化メカニズムの解明、Pd合金薄膜のナノインデンテーション試験による実用環境での機械的特性の評価などを行う。 本年度は、まずPdの引張り強度におよぼすAg濃度の影響を評価した。Agの添加量を変えたPd0.9Ag0.1、Pd0.8Ag0.2、Pd0.7Ag0.3、Pd0.6Ag0.4およびPd0.5Ag0.5の5種類のPdAg合金に対して引張りを負荷した。得られた応力ひずみ線図から、Ag濃度の増加にともなって引張強度が増加することがわかった。系内に生成する欠陥は主としてShockleyの部分転位であった。これはPd合金の引張りに関する実験結果と一致する。次に、水素を含むPd合金の引張り特性を評価した。Pdの場合、水素濃度が0.5のとき引張り強度は著しく低下する。これはPd中の水素化物が2相分離状態になるからである。PdAg合金では、Agを添加することにより2相分離状態が解消される。そのため、界面における転位生成がなくなることにより、引張り強度の低下は抑制されることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にしたがって研究を実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画にしたがって、ナノ多結晶Pd合金バルク材の水素脆化メカニズムを解明するための理論研究を実施する。
|
Causes of Carryover |
ソフトウェア開発を中心とした研究を行ったため残金が生じた。本年度は研究を促進するために、私たちが所属する研究所が所有するクラウド型共用計算機システムの使用料に前年度の残金を活用する。
|