2021 Fiscal Year Research-status Report
連続体と不連続体をつなぐメッシュフリー・分子動力学ハイブリッド解析手法の開発
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21K03772
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
只野 裕一 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (00346818)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マルチスケール解析 / メッシュフリー法 / 分子動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,不連続体である原子と連続体をシームレスに取り扱うことを可能とするメッシュフリー・分子動力学ハイブリッド解析手法を提案するものである.マイクロメートル~ナノメートルスケールの物理現象を統一的に数値解析することを実現し,固体材料の変形における連続体から不連続体へ,もしくは不連続体から連続体への遷移はいかにして起こるのかを,明らかにすることを目的とする. 研究課題初年度である令和3年度は,本研究の遂行に必要となる基礎理論の構築と,提案理論の実装を中心に,研究を推進した.年度前半に,研究遂行に必要な解析環境の整備を行い,同時に提案理論の定式化を進めた.理論構築においては,本研究課題の中核となる,連続体-不連続体間のハイブリッド解析手法の定式化を進めた.提案理論の特徴は,連続体解析に対する物質点と,分子動力学解析における原子の両方の性質を併せ持つハイブリッド物質点を導入することにある.このハイブリッド物質点の具体的な定式化について,連続体解析における支配原理である仮想仕事の原理と整合するよう留意しながら定式化を進め,力学的に矛盾のない体系について,複数の方法を考案した.年度後半はこれに加えて,申請者がこれまでに開発したメッシュフリー解析プログラムと,新規に導入する分子動力学解析プログラムと融合する方法について検討した.申請者が新たに開発した分子動力学解析プログラム,ならびに汎用分子動力学解析パッケージLAMMPSによる実装を,それぞれ別個に行い,いずれの実装方法でも問題なく環境構築が可能なことを確認できた. 令和4年度は,提案モデルの本格的な構築・実装と,具体的な数値解析を通じた妥当性の検証を行う計画であるが,このための基盤構築はおおむね当初の予定通り進められたものと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究計画は,本研究の遂行に必要となる基礎理論の構築と,提案理論の実装が中心であったが,「研究実績の概要」に記載の通り,おおむね当初計画通りに研究を進められており,令和4年度の研究計画に向けた基盤を予定通り構築することができた. 新型コロナウイルス感染症の影響で,当初参加を予定していた国内会議がいずれもオンライン開催になり,また対面での研究打ち合わせは年度を通じて実施できなかったが,オンライン講演会への参加や,関連分野の研究者とのオンライン研究打ち合わせを複数回にわたって実施し,当該分野の情報収集や研究討論もおおむね予定通りに実施することができた. 研究開発環境について,年度前半は既往の設備で対応したが,年度後半に新たに数値解析用高性能ワークステーションを導入したことにより,より高速かつ大規模な数値解析の実施が可能な計算環境を構築した.令和4年度は,提案モデルの本格的な構築・実装と,具体的な数値解析を通じた妥当性の検証を行う計画であるが,このための基盤構築はおおむね当初の予定通り進められたものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究の進捗状況は順調に進展したことから,令和4年度は予定通り,まず年度前半に提案理論の精緻化と実装を実施する.年度後半より提案手法の妥当性の検証,解析精度,解析コストに関する体系的検討を行い,提案手法の適用可能性を明らかにする予定である. 具体的には,まずモデルの基本的な性質を調査するため,面心立方構造を想定した実装を行い,単純な変形中の転位挙動,微視的な亀裂進展などを解析する.既存の手法による解析結果が得られている問題に対して,既往の解析結果と同等の結果が得られるのか,その妥当性の検証を行う.つぎに,メッシュフリー法における物質点数や分子動力学法の原子数,遷移領域のハイブリッド物質点の数などが,解析結果へ及ぼす影響を定性的および定量的に調査し,既存の手法に対する優位性を調査する.一方,提案手法は有限要素法を用いた既存の手法と比較して,計算コスト(計算時間およびメモリ使用量)が増大することが懸念されるため,複数のベンチマーク解析を活用し,計算コストに関する定量的な評価も行う.また,状況が許せば,研究協力者であるJiun-Shyan Chen教授の研究グループを訪問し,集中的な情報交換と研究課題に関する討論も実施することも計画しているが,年度内の訪問が困難な場合には,電子メールやオンライン会議を活用した情報交換,研究討論を行う. これらを通じて,提案モデルの解析精度と計算コストを定量的に評価し,モデルの妥当性を検証すると共に,最終年度(令和5年度)に向けての課題を抽出する.これを踏まえて,最終年度はより複雑な解析への適用を通じて,提案手法の応用可能性と将来的な課題を抽出する.これを通じて,本研究課題を総括する計画である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により,当初計画で参加を予定していた国内会議や研究打ち合わせがオンラインでの開催となったことから,使用しなかった国内旅費を次年度に繰り越すこととなった.令和4年度に,可視化用ワークステーションを新規購入する予定であるが,繰越額を合算することで,当初計画よりも高性能なワークステーションの導入が可能となり,より効率的に研究を推進できるものと期待される.
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