2021 Fiscal Year Research-status Report
磁気研磨法による微細複雑形状部品の表面仕上げ技術の開発
Project/Area Number |
21K03786
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
鄒 艶華 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (10516678)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 磁気研磨法 / 変動磁場 / 微細複雑形状部品 / 表面仕上げ / 高能率加工 / 高精度加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,磁気研磨スラリーが交番磁場中に生じたダイナミックな動きを利用して,微細複雑形状部品の表面仕上げを実現する方法を提案している.また,磁気研磨スラリーはミクロンサイズの磁性粒子を利用するため,微細複雑形状部品の表面にダメージを与えずかつナノレベルに仕上げることができる.さらに,超精密研削加工で僅かに残留した加工痕も除去できる加工法として期待される. 本研究で提案している新しい磁気研磨法では,変動磁場中にある磁性粒子の活発な動きを磁性砥粒と連動させ,分散しながら安定的にかつ均一に超精密加工を実現するため,最適な実験条件の選定が重要である.令和3年度にはまず磁極形状・寸法の設計,磁気回路の設計を行い,磁気ブラシ形成及び作用条件を検討した.その結果,磁極は直径15㎜,長さ20㎜のSS400材で作成し,その先端に水平方向と垂直方向に2mm間隔、幅1mm、深さ1mmの溝を刻んだ磁極を利用する場合は,磁極の先端に均一な磁場分布が得られ,変動する磁気クラスタが形成され,十分な磁気力(加工力)が得られることが確認された. 次いで,加工対象に応じた加工条件の最適化を目的として実験的検討を行うため,加工装置を試作した.また,SUS304ステンレス鋼板を工作物として研磨実験を行い,直流磁場を用いた磁気研磨法に比べて,高品位化が達成されることが示され,その効果は変動磁場の周波数や磁性粒子径などの加工条件によって異なることが明らかとなった.また,実用化に向けて6軸ロボットの先端に工作物を取り付け,プログラミングによる加工軌跡の制御を実現できる加工装置を開発し,特許出願を予定している. 以上の研究成果をまとめて,第10回JSME先端生産技術に関する国際会議(LEM21)に論文を発表し,精密工学会学術講演会に論文が公表された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度にはまず磁気研磨スラリーが交番磁場中に生じたダイナミックな磁気ブラシの形成及び作用条件を解明することを目的とした.磁極先端に形成される磁気ブラシは磁極先端の磁場分布,変動磁場の周波数,磁性粒子のサイズに関係している.磁場測定・解析を行い,磁極形状・寸法などの影響について検討した.その結果,磁極は直径15㎜,長さ20㎜のSS400材を利用し,先端に水平方向と垂直方向にそれぞれ2mm間隔、幅1mm、深さ1mmの溝を刻んだ磁極を製作した.この場合は,磁極の先端に均一な磁場分布が得られ,変動する磁気クラスタが形成され,十分な加工力(磁気力)が得られることを確認した. さらに,加工対象に応じた加工条件の最適化を目的として検証実験を行った.まず,SUS304ステンレス鋼板を工作物として研磨実験を行い,変動磁場を利用した場合には,磁気ブラシの変形は全く見られず,微小磁性粒子の凝集がなく,常に加工が実行されることが確認できる.また,直流磁場を利用した場合に比べて,高品位化が達成されることが示され,その効果は変動磁場の周波数や磁性粒子径などの加工条件によって異なることが明らかとなった.次に,本加工法を樹脂材料(ポリクロロトリフルオロエチレン)の表面仕上げへ適用し,研磨実験を行った.その結果,樹脂材料に対して,本加工法により高品質表面仕上げが実現できることを明らかにした.また,実用化に向けて6軸ロボットの先端に工作物を取り付け,プログラミングによる加工軌跡の制御が実現できる実験装置を開発し,これらの研究成果をまとめ,特許出願を予定している. 以上より,当該研究はおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究により磁気研磨スラリーが変動磁場中に生じたダイナミックな磁気ブラシの形成及び作用条件を解明し,平面工作物に対して高精度表面仕上げが実現できることを明らかにすることができた.本手法の微細複雑形状部品の表面仕上げを実現するにはより詳細な検討が必要とされる.そこで令和4年度以降は,微細複雑形状部品の表面仕上げを実現するため,磁場の選定を再検討し,6軸ロボットを利用した新しい加工装置を利用し,プログラミングによる加工軌跡,加工圧力(磁気力)を制御しながら高品位高能率加工を実現する加工条件の最適化を図る.微細複雑形状部品の表面仕上げを実現するため,最適な実験条件の選定が重要である.その中に,まず使用される磁極の先端の磁束密度を実測及び磁場解析を行い,最適な磁極の形状・寸法を選定することによる主に磁気力に影響する磁場強度を強める.次に,変動磁場中に形成される磁気ブラシと微細複雑形状部品との間に最適な接触状態で加工を行えるため,ロボットによる間隙などを制御する.一般に磁性砥粒サイズが小さくなるほど仕上げ面粗さは良好になるが除去能率の低下を招き,微細複雑形状部品の形状・寸法に応じて最適な磁場強さの選定が必要となる.従って,高能率除去と精密仕上げを両立させるためには,(1)磁極先端の磁場強度,(2)磁性砥粒の種類,サイズ,(3)加工間隙などの制御,(4)工作物及び磁極の回転速度について最適化を図る必要があり,加工実験を行い加工量,仕上げ面粗さを評価することによりこれらの条件を実験的に検討する. 最終的に,現在生産現場で高品位高能率加工が強く求められている微細複雑形状部品に対して本加工法を適用し,その有効性を実験的に検証する.そして,研究成果をまとめ,学会発表する.
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画の遂行に当たり加工実験装置を試作し,加工途中に加工圧力を測定記録するためのデジタルピークホルダー(ミネベアミツミ 社製,CSD-709,\87,890)を注文したが,納期遅れが生じたため,本年度に限り現有機器を借用して研究を遂行した.そのため,当初計画より90,170円のマイナスとなった. 次年度においては,当初計画どおり当該実験装置専用のデジタルピークホルダーを設置して研究を遂行する.
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Research Products
(4 results)