2021 Fiscal Year Research-status Report
粉末の溶融凝固現象の把握に基づく品質を保証する造形条件設定指針の構築
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21K03790
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古本 達明 金沢大学, 設計製造技術研究所, 教授 (60432134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 諭 金沢大学, 設計製造技術研究所, 特任教授 (30882584)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 粉末床溶融結合法 / 金属粉末 / 高速度カメラ / 温度測定 / スパッタ / ヒューム |
Outline of Annual Research Achievements |
粉末床溶融結合法を対象とし,高速度カメラを用いてレーザ照射時に溶融池周辺で生じる粉末の溶融・凝固の様子を観察し,粉末種類や造形環境がスパッタ・ヒュームの飛散様相に及ぼす影響を調べた.その結果,(1)粉末床へのレーザ入射角度,(2)チャンバ内部のコレクタ風,(3)チャンバ内部の酸素濃度,(4)粉末形態がスパッタの飛散様相や溶融池の挙動に影響する主因子であることを明らかにした.また,スパッタの飛散速度はサイズに依存して変化すること,粉末表面の酸化膜は粉末流動性に影響を与えるがスパッタ発生数に寄与する直接的な因子ではないこと,造形粉末へのナノシリカ粒子添加は母材粉末のかさ密度を大きくする効果があり,雪崩エネルギは安息角や雪崩角と比較して粉末様相を把握する有用な指標であること,ナノシリカ粒子の添加は溶融池に取り込まれる粉末量を増加させる効果があり,溶融池から発生するスパッタ量は溶融池に取り込まれる粉末量によって変化すること,リサイクル粉末は相対的に小さい粉末が減少し,粒径が大きな粉末にはスパッタや熱影響を受けて変色した酸化粉末が混在することを見いだした.また,SEM観察やパーティクルカウンタでの評価結果と併せ,ヒュームは数十nmの粒子が数珠状に凝集し,個々のヒュームが連なることで20~300nmのサイズで存在すること,レーザ出力が大きくなると発生するヒュームも増加すること,完全溶融よりも部分溶融の造形条件で発生するヒューム量が増加することを明らかにした. さらに,ハーフミラーを介した光学系の設計を行い,2台の高速度カメラを同時に用いて1000℃を越える温度範囲で測定が可能となった.同装置で測定した結果,チャンバ内の酸素濃度が高くなると溶融池のサイズが大きくなるが,レーザ照射部の最高温度には影響を及ぼさないこと,溶融池の温度は粉末種類によって大きな違いがないことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は,(1)複数の高速度カメラを用いた粉末挙動の観察と温度分布測定,(2)造形中に生じるスパッタ・ヒュームの挙動評価を行う計画としていたが,予定通りにほとんど全ての実験及び評価を行うことができた.ただ,造形プレートに貼付したAE波測定に関する実験評価が十分にできなかったためこの評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,造形物の品質保証技術確立に向け,造形最小単位である粉末の溶融・凝固様相を明らかにし,プロセス不安定化の主要因であるスパッタ・ヒュームの発生機構を解明することである.今年度は引き続き,高速度カメラを用いてレーザ照射時に溶融池周辺で生じる粉末の溶融・凝固の様子を観察する.そして,造粒時の炉内温度制御によって酸素濃度を,乾燥減量法によって水分量を変化させた粉末を用い,溶融池の温度分布やスパッタ・ヒュームの挙動を評価し,粉末が有する各因子が溶融・凝固挙動に及ぼす影響を調べる.また,酸素濃度や湿度が高精細に管理された造形チャンバを製作し,環境因子が造形特性に及ぼす影響を同様に評価し,材料や環境に起因したスパッタ・ヒュームの発生因子を特定する.このとき,マルエージング鋼に加えて環境中に含有する酸素の影響を受けやすい銅粉末やアルミニウム粉末を用いることで,効率的な実験の実施に努める.また,得られた動画を用いて粒子画像流速測定法によるスパッタやヒュームの挙動を調べるとともに,急激な温度変化で創成されるレーザ照射部の気流が溶融池形成やスパッタ発生に及ぼす影響を調べる.そして,粉末の溶融・凝集・凝固現象を解明することで,溶融池やドロップレットの形成機構,スパッタ・ヒュームの発生機構を明らかにする.
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Causes of Carryover |
設備備品費として計上していた超微粒子パーティクルカウンタを自助努力で購入したことに加え,コロナウイルスの影響で各機関との打ち合わせをWEBにて開催して旅費を執行しなかったため.次年度に繰り越した予算は,新たに追加する純銅粉末やアルミニウム粉末を用いた実験評価にかかる物品費として使用する.
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Research Products
(7 results)