2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K03824
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
平 俊男 奈良工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (60280426)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 力学的感性 / 力の流れ / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,力学的感性を対象物体内部の力学的負荷の状態を直感的に把握する能力であるととらえ,その解釈の手がかりとして「力の流れ」を具現化した位相最適化形状に注目した.位相最適化形状は,与えられた設計領域と境界条件に対して力学的合理性を実現するように定まるものであり,また構造物内部の力の流れの視覚表現手段として設計教育に用いられている例もみられることから,力の流れの表現形式のひとつとして解釈できる.一方で,構造設計者は力学的な解析を行うことなく直感的に同様の形状を空間的パターンとして想起していることが推測される.したがって,任意の境界条件から力の流れを表現する画像が力学的解析なしに得られるならば,その写像の分析によって力学的感性を視覚化できる可能性がある.ここでは,ニューラルネットワークを用いる次元圧縮手法の一つである変分オートエンコーダ(Variational Auto Encoder, VAE)を利用し,グレースケール画像で表される生成形状を訓練データとして与える.VAEは,訓練データそれぞれに対して入力と同じデータを出力するように学習させることによって,ネットワーク中間層の少数の潜在変数としてその特徴を抽出することができる.位相最適化形状の例でいえば,多数の組合せが考えられる設計変数空間と比較的少数の境界条件との写像関係がネットワークとして表現され,形状特徴が抽出されることに相当する. 両端支持はりの変位拘束点の位置をランダムに設定し,SIMP法によってコンプライアンス最小化を行った位相最適化形状(設計変数は120×40)を訓練データセット(サイズ: 1000)としてVAEを適用した.その結果,2次元の潜在変数空間への入力によって120×40画素の位相最適化形状画像が出力できること,および潜在変数空間は変位拘束点の位置に対応することが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
力の流れを表現する画像が120×40画素で構成されているにもかかわらず,学習によって形成された変分オートエンコーダのデコーダへは2変数の入力のみで生成可能なことを確認している.このデコーダは力学的モデルを与えられていないにもかかわらず,力学的合理性を持つ形状を生成できているため,力学的感性を視覚化するための手がかりとなる.ただ,形成されたネットワークの検討を未だ具体的に行えていないことから,初年度に明らかにする予定であった構造力学初学者が習得すると期待される普遍的なレベルの力学的感性の解釈を確立したとはいえない.そのため「やや遅れている」と判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
現状では,訓練データセットとしてコンプライス(変形のしやすさ)が最小化された形状のみを与えていたために,学習済みのネットワークから出力される形状は力学的に「よい」ものばかりとなりそれらの多様性は限定的なものであった.今後,形状生成にランダムさを導入し,力学的な観点からは不適当な形状も含んだ訓練データセットを用いて学習したVAEデコーダのネットワークを検討することで普遍的なレベルの力学的感性の視覚化を図る.さらに,このようなネットワーク出力と,優れた力学的感性が発揮されていると表現されるような形状との比較検討を行うための準備を進める.
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Causes of Carryover |
学会講演会がオンライン開催となったため旅費が発生しなかった.また,深層学習に必要なパーソナルコンピュータ部品(グラフィックスボード)の価格が高騰していたため,購入を次年度に延期することとしたために次年度使用額が生じた.
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