2021 Fiscal Year Research-status Report
トラクションドライブの転がり疲労損傷メカニズム解明と疲労強度予測式の導出
Project/Area Number |
21K03827
|
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
成田 幸仁 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90431519)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 機械要素 / トラクションドライブ / 疲労強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
ローラ表面や内部の欠陥寸法やビッカース硬さ,圧縮残留応力等の影響因子に基づいたトラクションドライブの転がり疲労強度予測式の導出を目的として,三カ年に渡って研究を行う. 初年度である今年度は,実験で用いている試験ローラのビッカース硬さと圧縮残留応力を測定し,ローラ表面からの深さに対するそれらの分布曲線を得た.特に,得られた圧縮残留応力はローラ表面近傍で300MPaとなり,高い値であった.また,それらの測定結果を考慮して,ローラ内部応力を計算により求めた.その結果をこれまでの計算結果と比較したところ,ローラ内部応力は高まり,これまでの実験で得られている転がり疲労強度も高くなった. これまでの研究で得られたローラ材料内部の非金属介在物寸法に基づく疲労強度推定式と修正された上記疲労強度を用いて,これまでの多数個の転がり疲労試験で損傷起点となった非金属介在物寸法を逆算したところ,転がり軸受に関する先行研究において強度に影響を及ぼさないとされるほど小さい値となった.この結果から,トラクションドライブの転がり疲労強度はローラ表面のき裂によって決まる可能性が極めて高くなった. 以上の結果より,今年度に予定していた,内部に人工欠陥を導入したローラによる転がり疲労試験は取り止めることとし,来年度に予定する表面に人工欠陥を導入したローラの転がり疲労試験とその結果に基づく疲労強度推定式の導出に,試験ローラ等のリソースを集中させることにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ローラのビッカース硬さと圧縮残留応力は,計画通り測定済みである.その結果に基づいてこれまでの疲労試験結果を見直したことによって,前述の通り,計画当初に予定していたローラ内部欠陥に着目した実験は取り止めとなった.その分のリソースは来年度に行う表面欠陥に着目した多数個疲労試験に集中させることが出来るようになったため,研究遂行はむしろ効率化されたと言える. 今後の疲労試験に用いるローラ試験片は必要数を用意済みであり,表面欠陥寸法を当初計画よりも細かく変えて実験する予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によって,ローラ内部欠陥という因子の影響を取り除いて考えて良いことが分かった.よって,来年度以降も当初計画通りに研究遂行が可能である. 来年度は表面に人工欠陥を導入したローラで多数個の疲労試験を開始する.その結果に基づいて,表面欠陥寸法と疲労強度の関係を明らかにする予定である.欠陥寸法を変えて疲労試験を行うので,1年半は必要と考えている.そのため,ある程度実験結果が得られた段階で欠陥寸法と疲労強度の関係を整理し,計画がそのまま継続可能かどうかを見極めつつ研究遂行する予定である.
|
Causes of Carryover |
マイクロビッカース硬度計の購入や合計80個のローラ試験片製作費用として予定通りの項目として支出したが,ローラ製作費にごくわずかな誤差(合計2万円程度)が生じた.翌年度以降はローラ表面に人工欠陥を導入する加工を行うため,その費用として活用する予定である.
|