2021 Fiscal Year Research-status Report
油中酸化物の吸着力・せん断抵抗の直接測定と潤滑摩耗メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K03831
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
本田 知己 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (80251982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 啓悟 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (50725322)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メンテナンストライボロジー / 油中酸化物 / 吸着力直接測定 / 吸着シミ ュレーション / 潤滑摩耗 |
Outline of Annual Research Achievements |
「潤滑油酸化劣化機構」、「酸化物吸着と潤滑摩耗機構」の二つの「学術的問い」に対して、実験解析と数値解析から研究することで、油潤滑下での摩擦摩耗の起点となる酸化物吸着について、その源流まで遡ってメカニズムを考察し、実験・分析とシミュレーションの両面から科学的根拠とトライボ志向設計モデルを提示することを目的としている. 当初2021年度に予定していた「水晶振動子測定システムを用いて,金属表面への酸化物の吸着量を精密に測定し,酸化度と吸着物質量との関係を明らかにする」という研究課題については,その測定技術の習熟度が十分ではないことから,引き続きその測定を試行している.その代わりに,2022年度に実施予定だった「原子間力顕微鏡を活用したコロイドプローブ法により,酸化の度合いを変化させて吸着力およびせん断抵抗を直接測定する」課題について並行して行った. 供試材料にはシリコンウェハにFeを蒸着したものを用いた.表面粗さは二乗平均粗さRqで3.48 nmであった.カンチレバーにはばね定数が8.51 N/mでSi3N4製のものを用いた.カンチレバー先端には直径8 μmのSiO2粒子が固定されている.供試油には,市販の油圧作動油を用い,それを模擬的に5段階に熱酸化させたものを用い新油のデータと比較した.酸化度が高くなるにつれて徐々に堆積物が表面を覆うようになり,摩擦係数は増加した.表面を覆っている堆積物は凝着力が比較的大きく,粘着質でバーニッシュの前駆体であることが示唆された.さらに酸化度が高くなると大きさ数μmの堆積物が見られるようになり,原子間力顕微鏡によるマイクロ・ナノ摩擦試験は困難となった. 以上の結果から,酸化度が高くなるにつれて表面に存在する酸化生成物が増加し,その大きさも大きくなり,さらにせん断抵抗も増加することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初2021年度に予定していた「水晶振動子測定システムを用いて,金属表面への酸化物の吸着量を精密に測定し,酸化度と吸着物質量との関係を明らかにする」という研究課題については,その測定技術の習熟度が十分ではないことから,引き続きその測定を試行している. その代わりに,2022年度に実施予定だった「原子間力顕微鏡を活用したコロイドプローブ法により,酸化の度合いを変化させて吸着力およびせん断抵抗を直接測定する」課題について並行して行い,定量的な傾向をつかむことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,2021年度に試行してきた「酸化度と吸着物質量との関係」をさらに明らかにしていくとともに,2021年度に実施した「酸化物の吸着力およびせん断抵抗」の実験による結果をもとにして,分子動力学を用いた数値解析との比較により吸着メカニズムを定量的に明らかにする予定で進めている. 2022年度の予算は数値解析を行う研究分担者に重点的に配分し,しっかりと研究成果に繋げる方針で進める.
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Causes of Carryover |
学会にて情報収集を行うために旅費を計上していたが,コロナ渦で出張が取りやめになったため使用を中止し,次年度に回すことで有益に予算執行しようと考えた. 上記の理由で,次年度使用額が生じた.
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