2021 Fiscal Year Research-status Report
対向噴流のよどみ点領域における複雑流れが高ペクレ数物質混合に及ぼす影響について
Project/Area Number |
21K03850
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
角田 博之 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10207433)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乱流 / 噴流 / 対向噴流 / よどみ点 / 乱流界面 / パッシブスカラ / PLIF |
Outline of Annual Research Achievements |
噴流が一様流に対向衝突する流れ(対向噴流)は下流域によどみ点が存在し,またその付近が乱流(噴流)と非乱流(一様流)の界面になるという興味深い物理的特徴をもつ.よどみ点流れを含む流れの幾何的構造や乱流界面は運動量や物質の乱流輸送に大きな影響を与えることが知られている.そこで,本研究では,2種類の蛍光物質の濃度場と速度場を同時計測できる2色PLIF/PIVシステムを開発することで,流れの幾何構造の識別と物質境界の同時検出を行うことを目指す.これにより,物質境界と乱流/非乱流界面との関係を調べ,高ペクレ数スカラ物質の混合過程に及ぼす流れの幾何構造の影響を明らかにすることを研究最終目的とする. 上記を踏まえ,初年度の研究目的は,速度場ならびに2種類の蛍光試料の濃度場を同時計測可能な2色PLIF/PIV計測システムを開発し,噴流場への適用を試みることとした.噴流と周囲流体のそれぞれに蛍光波長帯が異なる二種類の蛍光染料を混入し,両者の蛍光色の違いから噴流と周囲流体との界面を計測する.その際,境界の検出精度を高めるために,各蛍光染料の吸光波長帯に近い発光波長をもつ二種類のレーザーシート光を照射する.これにより,染料が発する蛍光の光強度が高まり,より高コントラストの画像が得られることが期待される.各染料からの蛍光画像を光学フィルタを通して二台のカメラで同時計測する.速度場の測定のために,トレーサー粒子を流体中に混入させ,PIV法による画像処理から速度ベクトル場を算出する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2色PLIFシステムの完成には,蛍光染料の吸光波長帯に適合したレーザー光源の選択が必要となる.2台のレーザーの1台には現有の緑色レーザー光源(波長532nm)を使用し,約525nmに吸光ピークを有する蛍光染料(ローダミン6G)を組み合わせることにした.残り1台を本経費で新規購入することを計画し,期間前半で各種蛍光染料の吸光波長帯を調べ,併せてレーザー光源の選定を行った.この結果,590nm付近に吸光ピークを有する染料(スルホローダミン)と波長600~700nmの赤色レーザーの組み合わせを選択した.高出力赤色レーザーを扱う数社に絞って機種選定を行い,目的達成に必要な性能を有する赤色レーザー(波長638nm)を購入した.なお,波長638nmの赤色レーザーを選んだ理由は,緑色レーザーと組み合わせるローダミン6G蛍光染料の吸光スペクトル値がこの波長帯でほぼゼロとなっているため,2色の識別がより明瞭となることを期待したためである.その後,購入した赤色レーザーの性能確認のために,赤色レーザーを光源とした管内流の可視化を予備実験として行い,十分な性能を有することを確認した.また,2種類の蛍光染料それぞれについて濃度を変化させた水溶液を作成し,緑色レーザーと赤色レーザーを照射したときの蛍光画像をカメラで撮影して染料濃度と蛍光強度との関係を調べた.本予備実験データは今後の研究において重要な基礎データとなる.年度終盤に初年度の研究目的である噴流場に適用する準備を進め,現在,その実験遂行中である.以上のことから,初年度の研究目的をおおむね達成しており,②の進捗状況とした.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に準備した2色PLIF/PIV計測システムを用いて,円形対向噴流の実験を研究第2年度に行う.実験には現有設備である開水路ならびに噴流用円形ノズルを用いる.水路の一様流と噴流流体に初年度に選択した蛍光染料水溶液を混入し,両物質の濃度場と速度場を同時計測する.流れ場の局所幾何構造の識別には,速度場の変形速度テンソルと回転テンソルのノルムあるいは速度勾配テンソルの固有値を利用する.また,二物質の濃度場を正規化した上で重ね合わせ,両者の境界を噴流と一様流との境界線として検出する. 最終年度である第3年度では,スカラ場境界線の法線方向に沿った渦度エンストロフィーや速度勾配テンソルの不変量の分布を算出し,乱流/非乱流界面との関係を探る.これらの特性量の法線方向分布における急変点とスカラ場境界点とを比較することで,両者の関係を明らかにする.各種特性量を統計処理する際,流れ場の幾何構造を表す速度勾配テンソルの固有値などのスカラ値で条件付け,幾何構造との関係も探る.また,界面を通したスカラ場の変形と混合を定量化するために,スカラ場の空間相関やスカラ散逸量を流れ場の幾何構造で条件付けて統計処理を行い,界面法線方向分布として表すことで構造による違いを明らかにする. 得られた成果を学会で講演発表するとともに,学会誌に論文投稿する.
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