2021 Fiscal Year Research-status Report
新型コロナウイルス飛沫拡散の動的シミュレーションによる社会的距離概念の刷新
Project/Area Number |
21K03856
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山川 勝史 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 教授 (90346114)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 新型コロナウイルス / 飛沫感染 / 計算流体力学 / 感染シミュレーション / マスク / マスク変形 / 非構造格子 / 動的シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は動的シミュレーションにおいても最も重要なマスク変形に関する計算に取り組んだ.計画段階では高速カメラによる咳によるマスク変形量の測定結果を利用する予定であったが,変形量の精度を高めるため別予算で購入したモーションキャプチャーシステムを導入することで,マスクの詳細な3次元変形量を測定することができた.これは不織布マスクに取り付けた30個以上のマーカーを赤外線カメラで撮影することで動的な変化を顕著にデータ化できるものである.この変形データを元にマスク変形モデルを作成し,非構造格子を用いての計算格子を準備した.流れの計算には移動格子による保存則崩壊を回避するよう非構造移動格子有限体積法を一部改良した上で,これを用いて非圧縮性流体解析を行い,マスク内部から隙間を通って室内に流れ込む詳細な気流解析を実施することができた. これらの気流解析結果を元に新型コロナウイルスを含む飛沫計算を行った.飛沫に対しては湿度,温度影響下の蒸発を考慮し飛沫径変化や飛沫同士の結合等も考慮に入れている.テスト計算ではあるが,今回初めて実施した動的計算では口から発した飛沫を含む流れがマスクの変形によりその流速が一部低減され,その結果静的計算(マスク変形を行わない計算)との比較より,飛沫の飛散割合が小さいことが確認できた.つまり動的シミュレーションによりソーシャルディスタンスが縮まる可能性を見出した.現在は計算格子の見直し等を徹底的に実施し,より高精度な計算に向けて準備を進めている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最も重要なマスク変形シミュレーションにおいては,令和4年度の後半程度まで進んでおり,当初の計画以上に進んでいると言える.これは研究課題の優先度を再考し、他の課題(アフターコロナに向けての室内人移動による動的シミュレーション)のリソースを分配したことによるものである.従って本研究課題全般を考慮すると,概ね順調に進展していると結論付けるのが妥当であると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスについては日々刻々と状況が変化しており,申請時には予想しなかったデルタ株そしてオミクロン株による感染状況の変化(症状はある程度抑えられるものの感染力そのものが著しく強くなった)が起こっている.現段階でアフターコロナにおける室内環境下の解析や、ほとんど感染が確認されていな満員電車内のシミュレーションと比較すると,本研究課題の中心ともいえる「マスク変形シミュレーション」に注力し,ソーシャルディスタンシングについて再考するのは非常に重要且つ自然な流れであると考える.よって,本課題にフォーカスを充てた本年度の進め方は妥当であり,次年度についてもこの流れを踏襲する.しかしながら常に新型コロナを取り巻く状況の観察は怠らず,状況変化に柔軟に対応しながら課題を進めて行きたいと考える.
|
Causes of Carryover |
別途獲得した関連する研究費を流用することでより詳細なデータを構築することできた.これにより本年度の使用予定額を次年度に予定している流体計算システムへ追加することが可能となった.計算機に対する予算の上乗せはそのまま計算能力へ直結するため,今回の予算転用により本研究がより効率良く実施できると考える.
|