2022 Fiscal Year Research-status Report
新型コロナウイルス飛沫拡散の動的シミュレーションによる社会的距離概念の刷新
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21K03856
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山川 勝史 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 教授 (90346114)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 新型コロナウイルス / 飛沫感染 / 計算流体力学 / 感染シミュレーション / マスク / マスク変形 / 動的シミュレーション / エスカレーター |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス飛沫感染に対する動的シミュレーションとして,前年度推進した動的マスク計算については,より高速化のための施策を検討中であり,本件については次年度に詳細を報告する予定である.本年度は新たなアプリケーションとして,移動するエスカレーター上の感染者により発せられたウイルス飛沫が,他の乗客に与える影響についてシミュレーションを行った.エスカレーターの上りおよび下りの2種類の動作に対し,乗客の人数を変化させたケースについて調査を行った.その結果,上昇は下降よりも感染リスクが高くなった.これは特に下降時にはステップの垂直面の動きがエスカレーター内の気流に影響を与え,気流を攪拌することにより先頭に位置する感染者からの飛沫を上昇させることで,他の乗客へのリスクを低減させることに繋がったと推測される.また,感染者からの距離が離れるほど乗客へのウイルス飛沫の付着率が低下し,改めて物理距離の重要性が明らかとなった.こちらについては乗客間の隙間が大きくなり,その部分においてウイルス飛沫の落下が起こったことも一つの原因と考えられるが,このような動的シミュレーションにおける乗客数の低減は気流を動作させる影響の低下(例えると刃が欠けたタービンによる気流作動力の低下)が原因であると考えられる.今回の結果については前述の通りであるが,最も重要なのでこれまでに例の無い動的シミュレーションと飛沫シミュレーションの融合ができたということである.またこれらの結果は,学術論文だけでなくテレビ報道番組(ニュースZERO)や新聞各社(朝日新聞,日本経済新聞,京都新聞)などでも取り上げられ,注目度の高いものとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず最も重要なマスク変形シミュレーションにおいては,概ね予定通りの進捗であり,また満員電車での乗客乗降による動的シミュレーションについては,より人の動きが明確なエスカレーターへの計算対象を変更したものの,十分な結果を出すことに成功している.従って本研究課題全般を考慮すると,概ね順調に進展していると結論付けるのが妥当であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナの取り扱いが2類から5類へ引き下げられたものの,完全な終焉を迎えた訳ではなく,致死率は低いものの局所的なパンデミック再発の可能性は否定できない.また過去のパンデミックの頻度から推測すると今後20年以内に新たなウイルス飛沫の飛散による疾患が流行する可能性は十分あり,これらに備える意味でも本研究の継続は重要であると考える.本年度はエスカレーターと言う新しい状況へフォーカスを充てた進め方は妥当であり,次年度についてもこの流れを踏襲する.しかしながら引き続き新型コロナを取り巻く状況の観察を注視し,状況変化に柔軟に対応しながら課題を進めて行きたいと考える.
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Causes of Carryover |
別途獲得した関連する研究費を流用することでより当初予定以上の詳細なデータを構築することできた.これにより本年度の使用予定額を次年度に繰り越すことで,予定している流体計算システムがより高速に,またより低価格で購入ことが可能となった.今回の予算転用により本研究がより効率良く実施できると考える.
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