2022 Fiscal Year Research-status Report
Turbulence transport in a density stratified fluid generated by multiple scalars: mechanism of differential diffusion and quantitative evaluation
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21K03875
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沖野 真也 京都大学, 工学研究科, 講師 (30711808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花崎 秀史 京都大学, 工学研究科, 教授 (60189579)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 熱塩成層流体 / 減衰乱流 / 高シュミット数 / ソルトフィンガー / 直接数値計算 / 二重拡散対流 / バチェラースケール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、複数のスカラーによって形成される密度成層流体における乱流拡散現象についての知見を得ることである。特に、海洋における密度成層は主に熱と塩分によって形成され、熱塩成層と呼ばれる。ここで、塩分の拡散係数は熱の約1/100であり、塩分の拡散スケール(バチェラースケール)は熱の拡散スケールの約1/10となる。熱と塩分の両方の効果によって形成される鉛直密度分布が静的に安定であっても、両者の拡散スケールの違いに起因して、不安定性や対流が生じることが知られている。そのような対流は二重拡散対流と呼ばれ、従来、線形安定性解析によって説明されてきた。本研究では、熱塩成層流体における減衰乱流の直接数値計算を行ない、小スケールにおいて生じる不安定性が乱流全体の減衰にどのような影響を及ぼすかを調べた。これまでに実施されてきた線形安定性解析は無限小撹乱の発達・減衰を調べる手法であるのに対し、本研究では有限振幅撹乱の非線形的な時間発展を大規模な数値計算によって調べた点が特徴的である。 今年度は、流れの浮力比依存性について、特にポテンシャルエネルギー(密度撹乱の二乗に比例する量)の観点から調査した。ここで浮力比とは、密度成層に対する温度と塩分の寄与率を表すパラメータである。温度成層または塩分成層のいずれかが不安定である場合には、温度の拡散スケール付近で、ポテンシャルエネルギーが生成される。温度成層が不安定である場合にはポテンシャルエネルギーの生成は減衰初期に限られるが、塩分成層が不安定である場合にはポテンシャルエネルギーは持続的に生成されることを確認した。特に後者においては、長時間後に鉛直方向に長く伸びた密度分布(いわゆるソルトフィンガー)が形成されており、初期撹乱が減衰した後に、線形不安定性により再度流れが発達したことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の、単一のスカラーによって形成される密度成層流体の数値計算プログラムを拡張し、熱と塩分の両方が密度変化に寄与する場合のプログラムを開発した。密度成層の強さが中程度である場合について、様々な浮力比の値に対して計算を実施し、典型的に生じる流れを把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、熱塩成層乱流のフルード数(密度成層の強さを表すパラメータ)依存性について調査する。特に、温度成層または塩分成層のいずれかが不安定である場合に生じる、小スケールでの流れの不安定性が密度成層の効果をどのように受けるかに注目して結果を解析する。
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Causes of Carryover |
本研究課題を含む密度成層流体の数値シミュレーションがHPCI(High Performance Computing Infrastructure)の公募課題として選定され(hp220021)、計算機利用料が不要となったため。次年度使用額は大容量のデータを保存するための、ハードディスクの購入に充てる。
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