2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a slant type tidal turbine for small marine research buoys with an independent power supply system
Project/Area Number |
21K03879
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
坂口 大作 長崎大学, 工学研究科, 教授 (70244035)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 潮流タービン / 多目的最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋資源の有効利用には,広い海域を長期間にわたって定点観測できるようなサンプリングシステムが求められる.本課題では,独立電源用潮流タービンを備えた小型観測ブイの開発を行った.垂直軸タービンを流れ方向に傾け,回転損失の少ない傾斜タービンを新たに発案し,カットイン流速が低く,高効率なタービンを開発する.設計には,本研究者が開発応用している人工知能をメタモデルとした多目的最適化システムを利用し,傾斜型潮流タービンの最適翼を設計する.潮流タービンを備えた観測ブイは,3Dプリンタで作製し,回流水槽での特性試験および実海域での長時間実証試験を行う計画とした.本課題で開発しようとするブイは,直径400㎜の一般的なサイズとし.ブイの下部に潮流タービンが備えてあり,タービンが潮流により回転し,ブイ内のハブダイナモにより発電する.ブイは海底の錘により一点係留され,設置工事に潜水作業を必要としないなどの低コスト型とした.潮流から得られる電力量は十数ワット程度と少ないが,海水温度計測用ブイや塩分濃度計測用ブイなど機能を分化させることで,観測ブイの電力消費量を減らすことができるという特徴を持つ.また,安価かつ機能分化したブイを多数配置し,電源をバッテリーではなく小型潮流タービンを採用することで安定的に連続運用を可能としている.従来の観測ブイが大型かつ多機能で高価であったものを,潮流タービンを備えた小型の観測ブイにより解決し,実用的な広域観測システムを構築する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は,潮流タービンの最適化設計を行った.潮流は約6時間ごとに流速が変化する流れ場であるので,カットイン流速が低く,広範囲の流入流速で高い出力特性を示すことが求められる.本課題では,人工知能を組み合わせた遺伝的アルゴリズムにより形状探索を行う全自動最適形状探索システムを導入した. 最適化設計には精度の高いCFDが求められ,まずベースライン形状を設計し,3Dプリンタによる形状試作,実験回流水槽による検証装置を開発し実験を行った.さらに,垂直軸型タービンの欠点を補うべく傾斜型の潮流タービンを考案し,小さな流速でも回転させるようにブイを斜め方向に傾け,タービン翼の角度を流動抵抗が少なくなる向きに合わせることで効率が改善できるようにした.試作したベースライン形状を非定常CFDと実験装置により比較したところ,高い精度でパワー係数およびトルク係数が得られることが確認された.多目的最適化設計では,ベースライン形状の設計パラメータから性能に寄与すると考えられた11個の設計を可変とし形状探索を行った.変化する潮流速度に対して,幅広く高い出力特性を得るために,周速比0.2および0.4でのトルクを最大化するとともに,トルク振幅を最小化する目的関数を導入することで,高い起動性を確保することを狙った.実験計画法による基礎データにより人工知能を学習させ,遺伝的アルゴリズムによる形状探索システムに人工知能を組み込むことにより,広範囲な形状探索が可能であるシステムを構築した.得られた最適形状は,3Dプリンタで製作し回流水槽で検証した.最適形状タービンは,ベースラインより約2.5倍の出力改善が得られ,広い流速範囲で高い出力特性を持つ高効率潮流タービンを設計することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度は,多目的最適化設計システムを構築し,高性能な潮流タービンを設計することができた.研究2年度は,さらなるタービン性能を目指し,最適化設計および回流水槽による実験を行う.最適化設計では,設計パラメータの見直しを行うとともに,現在0.5m/sで起動するタービンのカットイン流速をより低くしたタービン設計の注力した開発を行う.また,発電機のコギング特性とタービンのトルク特性のマッチングが,タービン起動性に大きく影響することが考えられ,タービンと発電機の位相について実験的検討を行う.また,実証フィールドを用いた短期の検証試験を行い,実海域での性能検証やロバスト性の確認を行い,研究最終年度の長期運用に備えた準備を行う.
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