2021 Fiscal Year Research-status Report
排熱ハ―べスティング過冷却型潜熱蓄熱マイクロカプセルスラリーの熱流動特性の解明
Project/Area Number |
21K03892
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
赤松 正人 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (40315320)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 蓄熱マイクロカプセル / エリスリトール / 過冷却 / 放熱特性 / 粘度特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本は2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度の水準から46%削減することを目標に掲げている.日本が温室効果ガスの排出を大幅に削減するためには,産業分野の排熱の回収とその有効利用は不可避なテーマである.現在,蓄熱により低温未利用熱エネルギーを貯蔵・輸送して需要をマッチングさせるための様々な研究開発が進められている.このような状況下,Makuta et al.(Chem. Eng. Journal, 273, 192 (2015))はシェル材にシアノアクリレートを用いることでコア-シェル構造を有する蓄熱マイクロカプセルの開発を行い,過冷却による蓄放熱特性について報告した.その後,彼らはシリカ膜に覆われたエリスリトール蓄熱マイクロカプセルを開発した(Honda, A. et al., Experimental Mechanics, 21, 150 (2021)). まず初めに,幕田らの研究グループが開発したエリスリトール蓄熱マイクロカプセルをシリコーンオイルに分散させた分散液の放熱特性について検討した.この結果,シリコーンオイルに分散させたエリスリトール蓄熱マイクロカプセル分散液の過冷却解除による放熱に基づいた分散液の温度上昇が実験的に観察された.本測定(質量分率15%,過冷却解除条件:スターラーによる物理的刺激 900 rpm)において見積もられたコア材であるエリスリトールの放熱量は潜熱量の42.5%であることがわかった. 次に,幕田らの研究グループが開発したエリスリトール蓄熱マイクロカプセルをシリコーンオイルに分散させた分散液の有効粘度を音叉振動式粘度計を用いて測定した.この結果,エリスリトール蓄熱マイクロカプセル分散液において測定された平均有効粘度は198.63 mPa・sであることがわかった.この値は25℃シリコーンオイルの粘度の約2.1倍であった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水熱量計を用いて,シリコーンオイルに分散されたエリスリトール蓄熱マイクロカプセルの放熱特性を解明するための実験を繰り返しおこなった.これまでの実験結果から,すべての放熱実験においてエリスリトール蓄熱マイクロカプセルの放熱による分散液の温度上昇を観察することができた.本実験における温度上昇のピーク値の平均は 3.92 Kであった.また,この結果から見積もられたエリスリトールの平均放熱量は135.9 J/g であり,潜熱量の42.5%であることがわかった.なお,エリスリトールの潜熱量は320 J/gである.本実験により,シリコーンオイル42.5 gにエリスリトール蓄熱マイクロカプセル7.5 gを分散させた質量分率15%における放熱特性を定量的に解明することができた. 音叉振動式粘度計を用いて,シリコーンオイルに分散されたエリスリトール蓄熱マイクロカプセルの有効粘度特性を解明するための実験を繰り返しおこなった.これまでの実験結果から,質量分率15%(シリコーンオイル 42.5 g,エリスリトール蓄熱マイクロカプセル 7.5 g)のエリスリトール蓄熱マイクロカプセル分散液において測定された平均有効粘度は198.63 mPa・sであることがわかった.この値は25℃シリコーンオイルの粘度の約2.1倍であることもわかった.本実験により,シリコーンオイル42.5 gにエリスリトール蓄熱マイクロカプセル7.5 gを分散させた質量分率15%における粘度特性を定量的に解明することができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
水熱量計を用いて,シリコーンオイルに分散されたエリスリトール蓄熱マイクロカプセルの放熱特性を定量的に解明するために,質量分率の差異による蓄熱量,放熱量および熱損失量の時間依存性を定量的に把握すること,溶媒の差異による蓄熱量,放熱量および熱損失量の時間依存性を定量的に把握すること,そして,過冷却解除の差異による蓄熱量,放熱量および熱損失量の時間依存性を定量的に把握すること,これらが今後の研究の推進方策である. 音叉振動式粘度計および新たに購入したB型粘度計ViscoQC100回転式粘出形を用いて,シリコーンオイルに分散されたエリスリトール蓄熱マイクロカプセルの有効粘度特性を定量的に解明するために,質量分率の差異による粘度の温度依存性を定量的に把握すること,溶媒の差異による粘度の温度依存性を定量的に把握すること,過冷却解除の差異による粘度の温度依存性を定量的に把握すること,これらが今後の研究の推進方策である. 以上の放熱特性と有効粘度特性の実験より,質量分率に関しての最適条件,溶媒に関しての最適条件,過冷却解除に関しての最適条件を見出す. また,低温未利用熱エネルギーの回収と有効利用により温室効果ガスの排出を大幅に削減し,本スラリーを熱供給網の熱輸送媒体とする新しい熱インフラともいえる「熱のスマートグリッド」の実現を目指す.
|