2021 Fiscal Year Research-status Report
勾配法に基づく放熱用の最適多孔質体構造の提案とその実験的実証
Project/Area Number |
21K03896
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
佐野 吉彦 静岡大学, 工学部, 准教授 (90720459)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 形状最適化 / 多孔質体 / 局所体積平均理論 / 伝熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,放熱用の多孔質体構造に理論設計手法がないことを問題提起とし,勾配法と局所体積平均理論の連成により物理科学に基づく多孔質体デザイン手法を確立することである.1年目の目標は,上記の研究目的を達成するための一連の数理理論を確立することであった. まず,周期構造体を有するピンフィンヒートシンクを研究対象とし,理論の構築を行った.目的関数を構造体表面からの総放熱量とし,Lagrange関数の物質微分を求め形状勾配を導出した.形状変動は力法を採用し,変動領域を弾性体,導出した勾配を外力として与え,変位を領域変動ベクトルとして形状更新を行うこととした.このとき,周期境界条件を採用することで,無数の構造体から成る多孔質体においても,多孔質体の周期性を検討することで多孔質体における形状最適化手法の確立に成功した. 本手法に基づく2次元ピンフィンヒートシンクでの形状変動数値シミュレーションでは,放熱量を初期形状から23%向上させることに成功した.その最終形状はヒートシンク内の流れを分離攪拌する構造と積極的に放熱する構造の2つの構造体から成り,これらの構造体の相互作用により放熱量を向上できることが分かった.この構造体はこれまでのヒートシンクには無い特徴を有しており,工業的な応用が期待される.これらの結果は,国際学会で1件と国内学会で2件発表した.内1件では,若手優秀講演者賞を受賞した. 次に,本研究で開発した多孔質体の形状最適化数値シミュレーションの3次元化を試み,粒子充填層における形状改善を行った.ここでは,局所体積平均理論より導出した体積平均熱伝達率を目的関数として,勾配法と局所体積平均理論の連成問題として計算を行った.その結果,体積平均熱伝達率は最大で42%向上させることに成功した.この結果は国際学会で1件発表しており,現在,国際論文誌への論文投稿に向けて計算を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,放熱用の多孔質体構造に理論設計手法がないことを問題提起とし,勾配法と局所体積平均理論の連成により物理科学に基づく多孔質体デザイン手法を確立することである.1年目の目標は,上記の研究目的を達成するための一連の数理理論を確立することであり,おおむね順調に進行していると考えられる. 1年目では,周期境界条件を用いた多孔質体の最適化理論を提案しており,その理論に基づく2次元および3次元数値シミュレーションを開発することに成功している.さらに,勾配法と局所体積平均理論の連成問題にも取り組んでおり,粒子充填層において体積平均熱伝達率が向上する多孔質体形状についても結果を得ている.これからの結果は,既に国際学会2件,国内学会2件で発表しており,内1件では若手優秀講演者賞を受賞している.現在,国際論文誌への論文投稿に向けてさらなる計算を進めており,研究1年目における理論の構築と数値シミュレーションツールの作成はほぼ達成していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,放熱用の多孔質体構造に理論設計手法がないことを問題提起とし,勾配法と局所体積平均理論の連成により物理科学に基づく多孔質体デザイン手法を確立することである.2年目の目標は,1年目で確立した多孔質体形状の最適化理論および数値シミュレーションの妥当性を検証するための実験を行うことである. 多孔質構造体は3Dプリンターで造形する予定であり,形状最適化数値シミュレーションで得られた構造を一旦CADファイルに変換した上で造形させる必要がある.現在,実験する多孔質体の形状,大きさなどを形状最適化数値シミュレーションより計算しており,2年目の夏までには,実験で使用する3D多孔質体形状を作成する予定である. 上記の3D多孔質体形状の造形と並行して,実験装置の作成を行う.本実験では,伝熱量と圧力損失を計測する予定であり,テストセクションの寸法は数値シミュレーションを行った上で確実にその大きさを決定する.2年目の秋までには,実験装置を完成させる予定であり,今年度中には開発した形状最適化数値シミュレーションと実験で得られた結果を比較検討できるようにする. また,1年目の成果である多孔質体の最適化理論とその数値シミュレーション結果に関しては,英字論文を国際論文誌に投稿する予定である.
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Research Products
(4 results)