2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the droplet inner flow induced by adjacent droplet evaporation
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21K03898
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山田 寛 岡山大学, 自然科学学域, 講師 (60758481)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 液滴蒸発 / 液滴内部対流 / 有機溶媒 / 液滴振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,近接液滴の蒸発時に見られる液滴内部対流を詳細に把握することを目標としている.令和4年度は,接触角90°の2つの液滴中心間の間隔を変化させた場合における水蒸気濃度や温度分布の数値解析を行うとともに,超はっ水基板上に置かれた水滴に有機溶媒の液滴を近接させた場合における水滴の挙動と水滴内部の対流を評価した. 有限体積法を用いて液滴間隔を変化させた際の液滴周りの状態を数値的に求めた.液滴間隔が狭くなることで近接側における蒸発が抑制され,蒸発流束が大きく低下することがわかった.加えて,蒸発が抑制されることで潜熱の輸送量が低下し,液滴の中で最も温度が低い位置が遠方側に移動することが示された. 水と混和する液体および水への溶解量が20g/L以下の液体を有機溶媒として用い,超はっ水面上におかれた水滴に隣接するように滴下した.有機溶媒の水への溶解度に関わらず,水滴が振動する様子が確認されたため,この振動が発生する条件を実験的に検討した.その結果,水と比較して蒸気圧の高いアセトンやジクロロメタンでは振動が確認されたものの,蒸気圧の低い液体では確認されなかった.また,液滴の中心軸が左右に揺れる振動が見られることがわかった.この振動の原因として,マランゴニ効果による力が考えられる.振動が確認された有機溶媒の表面張力はいずれも30mN/m以下であり,水の72mN/mと比較して小さい.そのため,蒸発した有機溶媒の分子が水滴内に溶解または水滴表面に付着することで局所的な表面張力の低下を引き起こすことで振動が駆動されたものと考えられる.このことは有機溶媒と水滴の距離を変化させた実験からも推察することができた.有機溶媒と水滴の間隔を3mm程度としたときの水滴内部の対流は10mm/s程度と得られ,液滴蒸発による自然対流と比較して1000倍程度早くなることがわかったが,一様な流れ場は観察されなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は,近接する2液滴周囲の水蒸気濃度や温度の分布を数値的に求めた.また,隣接する有機溶媒によって誘起される水滴の振動現象について,発生する条件を明らかにするため実験を行った. 液滴間隔を狭くすることで近接している側では蒸発が抑制される.そのため,蒸発潜熱が奪われずに温度低下が緩和されることが数値解析より明らかとなった.この結果は,昨年度行った液滴表面温度の赤外線カメラによる観察結果と同じ傾向を示していることが確認された. 有機溶媒の液滴を水滴に隣接させることで,水滴が振動する様子が確認された.水への溶解度に関わらず,水と比較して蒸気圧の高い有機溶媒で現象が観察され,有機溶媒と水滴の距離が離れることで振動が弱まることがわかった.これは有機溶媒の分子が水滴に溶けることで局所的な表面張力が低下したためと考えられるが,表面張力の勾配は1方向に働くためこの力だけで振動は誘起されないと考えられる.振動によって液滴が変形することで働くラプラス圧や接触角の変化が復元力として働くと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
超はっ水面上に有機溶媒液滴と水滴を滴下した場合における振動の物理について,引き続き検討する.振動が発生する条件や接触角の変化などの有機溶媒液滴が隣接するときのみに見られる水滴の変化を確認する.振動については高速フーリエ変換等を用いて特徴的な周波数を抽出するとともに,表面張力の勾配に代表される液滴に係る力を式として表し,現象を説明することを目指す.また,これらによって誘起される水滴内部の流れをPIV等の解析を用いて理解する.
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Causes of Carryover |
消耗品の使用量が想定より少なかったため,次年度での使用を計画している.令和5年度において,設備備品の導入予定はない.計上している予算については試料作製のために必要な物品や光学観察用の部品,研究調査のために旅費に使用する予定である.
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