2021 Fiscal Year Research-status Report
Elongation of liquid film in wick by utilizing low-voltage horizontal-field electrowetting technique
Project/Area Number |
21K03900
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野 直樹 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20407224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹下 学 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (70549584)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒートパイプ / エレクトロウエッティング / 濡れ性 / ウイック / 誘電膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
5Gに代表される小型携帯IT機器の分野では発熱するCPU等の冷却技術がますます重要となっており,小型で薄型のヒートパイプはすでに有効な伝熱デバイスとしてスマートフォンなどの内部で使用されている.しかしCPUの性能向上や機器の薄型軽量化がさらに進むと,ヒートパイプ内の蒸発部(発熱部)に凝縮液が十分還流せずにドライアウトが生じ,冷却が困難になる危険性が考えられる.本研究では水平電界タイプのエレクトロウエッティングを誘電体膜の厚みを薄くすることで低電圧で駆動するように改変し,ヒートパイプ内の密閉な低圧環境でも作動する技術を研究する.具体的には誘電体膜として極薄の酸化チタン膜を使用して低電圧駆動を可能とし,ヒートパイプ内のウイック内での液膜の伸長作用を発現させる.すでに大気圧下でのこの作用の確認がほぼ済んでいるので,ヒートパイプ環境下での現象成立を明らかにする実験研究を行う.2021年度は,大気圧下で動作を確認した水平電界タイプのエレクトロウエッティングシステムを,ヒートパイプを模擬した薄い平板形状の特別な容器に組み込み,ヒートパイプとしての動作を確認後,エレクトロウエッティングを作動させない時と作動させた時のドライアウトの状況の差異を実験的に明らかにすることを目標とした.結果的には,この特別な容器によるヒートパイプとしての動作は確認できたが,技術的な諸問題が発生したためエレクトロウエッティングの効果を明確にすることはまだできなかった.技術的な問題を解決して今後着実に進める予定である.以上
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度には,まずエレクトロウエッティングのシステムを組み込む平板状のヒートパイプを設計し試作した.長さ113 mm,幅30 mm,深さ5 mmの空洞部分(蒸気移動部分)を持つ薄い長方形の容器の底面を黄銅製の板(黄銅は二分割されており,絶縁板(ポリ塩化ビニル)がつないでいる)とし,その内表面にウィックとして23本の三角形状のグルーヴ(深さ0.3 mm,頂角60°)設けて,液が還流するようになっている.一方,容器上面は内部観察用に透明なアクリル板とした.底面の黄銅は二分割されてそれぞれ電極とし,それらに付着させる誘電体膜の作成方法としてスパッタリング法を用いて黄銅板表面にチタン薄膜を作成した.チタンをまず推定膜厚300 nmになるまで成膜し,その後その表面を空気接触させて自然酸化させることで,表面極近傍を比誘電率の高い酸化チタン(比誘電率約83)へ変化させて用いた(ここで作った酸化チタンの層の厚みは推定で約20 nmである).この実験装置を用いてまずヒートパイプとしての動作を確認したところ,蒸発部側(加熱側)および凝縮部側(冷却側)の蒸気温度および圧力の測定値から,ヒートパイプとしての動作が確認され,また加熱部の入熱が大きいときはドライアウト状態に至っていることがわかった.しかし可視化用に設置した上部のアクリル板は付着した蒸気(水滴)により曇ってしまい内部の観察は困難であった.次にエレクトロウエッティングを発生させるために,作動液として塩化ナトリウム1 wt%水溶液を用いて実験をしたところ,容器内部での配線での漏電が発生しあまり精度の良い実験を行うことができなかった.今後は装置の構造や配線方法を改良して,新たに装置を作成して再び実験する予定である.以上
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,昨年度の実験の結果および技術的な課題をもとに以下の方針で進める. 1)実験装置(容器)の構造の見直し:ヒートパイプを模擬している現在の装置は隙間などのデッドスペースがいくつかあり,そこに蒸気が無駄に凝縮してしまうことが分かった.極力そのようなスペースがないような構造を考案して再製作する. 2)配線回路の改良:この実験では,エレクトロウエッティングを発生させるために,塩化ナトリウム1 wt%水溶液を作動液として使用する.そのため内部配線の露出部などに液が付着すると導電するなどして漏電の原因になりやすい.露出部がないように配線方法を改良する. 3)内部観察の工夫:曇り止めなどの工夫をして上面のアクリル観察窓からの液膜の観察を可能にできないかを再検討する.ドライアウト現象は蒸気温度の上昇からでも検知できるが,ドライアウト直前のウイック内の作動液の動きなどをできれば観察できるようにしたい. 以上の対策を施したうえで,ヒートパイプとして動作している状態からドライアウト近くまで加熱部の入熱を徐々に上げていった際に,エレクトロウエッティングを施すことによって,どこまでドライアウト発生が遅延できるかを実験的に明確にしていきたい.以上
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Causes of Carryover |
2021年度はまだコロナ禍の影響があり,密を避けるために,実験室にて本テーマを手伝う学生達が実験などを行う時間が足りなくなる事があった.このため実験計画が少し遅れており,実験装置のための物品等が予算が余ってしまった.2022年度はコロナの影響も薄れてくるので,そちらで余った予算も加えて集中的に使用する予定である.以上
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Research Products
(2 results)