2021 Fiscal Year Research-status Report
自励振動型ヒートパイプの流動様式決定機構の解明とその制御による熱輸送特性向上
Project/Area Number |
21K03906
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
安藤 麻紀子 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (60748094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 大樹 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70360724)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自励振動型ヒートパイプ / 逆止弁 / 流動抵抗 / 循環流 |
Outline of Annual Research Achievements |
自励振動型ヒートパイプ(Oscillating Heat Pipe, OHP)は、内部で循環流が生じている際に高い熱輸送性能が得られる。本研究の最終目的はOHP内の流れが循環流化するメカニズムの解明と,より簡易に循環流を実現する方法の提案である。 循環流化に大きく影響する因子として,本研究では特に流動抵抗に着目した。逆止弁付きOHPは順方向と逆方向で極端に流動抵抗差を設けることで,一方向循環流を実現する方法として先行研究にて実証済みである。初年度の活動では逆止弁を前提とし,逆止弁の順方向/逆方向の流動抵抗がOHPの内部流動及び熱輸送性能にどのように影響するかを,数値解析によって明らかにした。 まず,逆方向流は完全封止できると仮定し,順方向流動抵抗が及ぼす影響について調べた。順方向流動抵抗が小さい場合は,OHPの蒸発部を液体スラグが高速で流れることで高い熱輸送性能が得られるのに対し,順方向流動抵抗の増加に伴い,液体スラグがOHPの凝縮部に滞留しつつ,少しずつ蒸発部へ液体を供給する様態に変化し,熱輸送性能は低下することがわかった。一方,順方向流動抵抗が増加してもスタートアップ特性への影響は殆ど無いことが確認できた。また,逆止弁をOHPの全ターンではなく間引いて設置した場合にも安定動作はするものの,逆止弁から離れたターンでは得られる整流効果が減少し,流速低下あるいは短期的な逆流が発生することが確認され,十分な循環流化効果を得るためには,全ターンに逆止弁を設けることが有効であると言える。 次に,逆方向流の封止性に着目した数値解析を行ったところ,逆方向流動抵抗が順方向流動抵抗の50倍以下になると蒸発部での沸騰回数が明らかに減少し,熱輸送性能が低下する傾向があることがわかった。以上のように,循環流化と高い熱輸送性能の実現に必要な流動抵抗条件を数値解析により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は逆止弁を自励振動型ヒートパイプ(OHP)に組み込んだ場合を前提として,逆止弁の順方向/逆方向の流動抵抗がOHPの内部流動及び熱輸送性能にどのように影響するかを明らかにすることを目標としていた。可視化実験の準備がやや遅れているものの,2年目早期に実施することでキャッチアップ可能である。数値解析モデルを使ったパラメトリックスタディにより循環流化と高い熱輸送性能実現に必要な流動抵抗条件を明らかにすることができたことから,概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は,自励振動型ヒートパイプ(OHP)内で循環流を発生させ,高い熱輸送性能を得るために必要な流動抵抗の条件を明らかにすることができた。今後は初年度成果に基づき,逆止弁よりも簡易な構造での循環流化方法の探索を目指し,数値解析シミュレーションと可視化供試体による実験を行う予定である。逆止弁はピンポイントで流動抵抗差を設けるものであるが,ここでは流動抵抗の配置,流動抵抗を配置する区間の長さ等も考慮する。2年目は数値解析によるパラメータの絞り込みと,供試体の設計・製作を主に行う予定である。3年目には,循環流化の効果検証のための実験と実験結果を用いたモデルのコリレーションを行い,循環流化のための設計指針・設計解析ツールの確立を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していた可視化供試体の製作を2年目に持ち越したこと,また研究分担者との打合せを全てオンラインで実施したことで旅費の使用が無かったことにより,次年度使用額が生じた。当該助成金は,令和4年度に実施する可視化供試体の製作及び学会等の旅費として使用する予定である。
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