2021 Fiscal Year Research-status Report
微細流路内沸騰熱伝達の高時空間分解測定および動的伝熱メカニズム解明
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21K03908
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
中村 元 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (80531996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 俊輔 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (90516220)
船見 祐揮 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 講師 (70738004)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 沸騰熱伝達 / 計測 / 可視化 / 赤外線イメージング / 可視透明ヒータ / 時空間変動測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
R3年度に実施した主な内容を以下にまとめる. 1) 伝熱面作成および光学特性評価:赤外線透過窓材として用いるフッ化カルシウム,サファイア,赤外線透過ガラスに酸化インジウムスズ(ITO)を成膜した伝熱面を作成し,赤外線計測波長帯における伝熱面の放射率および透過率を測定した.伝熱面越しに沸騰観測および熱伝達変動測定を行うには,可視光を十分に透過しかつ赤外線を遮断する必要がある.そのため,所望の光学特性を得られるように多元スパッタ装置の稼働条件を変化させてITOを成膜した.その結果,ITOの厚さを700 nmとした時に,可視光を十分に透過しつつ赤外線(3~5μm)の透過率を0.3%以下とすることができた.また,その際の放射率は0.3程度であった. 2) 窓材越しの沸騰観測と熱伝達変動測定:作成した伝熱面をITO膜が上面となるように水平に設置して加熱し,その上にエタノールの液滴を落下させた時の沸騰熱伝達を測定した.沸騰の様相を伝熱面の上方から直接,下方から窓材越しに高速度カメラ(~3000 Hz)で撮影すると同時に,伝熱面の下方から窓材越しに金蒸着ミラーを介して高速度赤外線カメラ(~3000 Hz)で撮影した.赤外線カメラで測定した温度データを境界条件として伝熱面内の非定常三次元熱伝導解析を行い,沸騰液滴への熱流束変動を算出した.その結果,核沸騰気泡の生成,成長,破裂に伴って生じる薄液膜蒸発,ドライパッチ形成,リウェッティングによると考えられる熱流束変動の測定が可能であることを確認した.また,測定した液滴への全熱流束は,液滴が蒸発し切るまでに必要な熱量と比較して妥当な値であり,少なくとも時間・面積平均的には妥当な熱流束を測定できていることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した 1) 伝熱面作成および光学特性評価,2) 微細流路の実験装置製作,3) 流れの可視化および熱伝達変動測定,4) 熱伝達変動のメカニズム解明,5) 研究成果の公表のうち,1)と3)についてはR3年度に落下液滴沸騰の測定を通して実施した.今後,微細流路内に流動沸騰を発生させる実験装置を製作すれば,伝熱面越しに流動沸騰の可視化観測と熱伝達変動測定を同時に行える目途がついた.
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Strategy for Future Research Activity |
・矩形微細流路の実験装置製作:辺長2 mmの矩形流路内に水の流動沸騰を発生させる実験装置を製作する.流路の1面を可視透明ヒータ(赤外線透過窓材にITOを成膜した伝熱面)で構成する.矩形流路の上流側において脱気した純水を飽和温度近くまで加熱し,微細流路でITO膜を通電加熱して水を流動沸騰させる.流速および加熱量を調整して,各種流動形態(スラグ流,環状流など)が現れる条件を確認する. ・熱伝達変動測定:各種流動形態において,伝熱面越しに赤外線カメラおよび高速度カメラによる撮影を同時に行う.赤外線カメラで測定した温度データを境界条件として伝熱面内の非定常三次元熱伝導解析を行い,流動沸騰に伴う熱流束変動を算出する.得られた熱流束・熱伝達率が従来の経験式と比較して妥当であることを検証する.また,沸騰の各素過程における熱流束変動を定量的に明らかにする.なお,現有の赤外線カメラの画素分解能は0.2 mm/pixelが限界であり,十分な分解能が得られないことも想定される.そのため,拡大レンズを用いて画素分解能を上げるか,より分解能の高い赤外線カメラを借用することも検討する. ・伝熱面の熱物性値の影響調査:伝熱面として,熱物性値の異なる3種類の窓材(サファイア,フッ化カルシウム,赤外線透過ガラス)を用いた測定を行い,伝熱面の熱物性が温度変動に及ぼす影響を調査する.また,温度変動の違いが沸騰形態の変化を引き起こす可能性について調査する.本測定を通して,一般に伝熱面の熱物性値が熱伝達変動にどのような影響を及ぼすかについての知見を得る. ・熱伝達変動のモデル化:薄液膜蒸発,ドライアウト,リウェッティングといった各種素過程に対応した熱伝達変動特性を明らかにするとともに,スラグ流,環状流等の各流動形態における熱伝達変動について,特徴的な周波数,変動振幅等のパラメータを用いた定式化を行う.
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Causes of Carryover |
当初は,微細流路の実験に必要なポンプと流量計,および計測の画素分解能を向上させるための赤外線カメラ拡大レンズを先行して購入する計画を立てていたが,R3年度は落下液滴沸騰の実験を行うことで測定手法の検証を行った.R4年度から微細流路の装置を製作して流動沸騰の実験を開始するため,これらの物品は今後購入する予定である.
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