2021 Fiscal Year Research-status Report
能動的調湿性を有するウオーターフリー固体高分子形燃料電池
Project/Area Number |
21K03917
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷川 洋文 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (80197524)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 固体高分子形燃料電池 / 多孔質 / 調湿性 / 格子ガス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
能動的調湿性を有する燃料電池を実現するための多孔性調湿ガス流路の最適構造についいて数値解析による検討を先に行った.本研究で使用した,三次元シミュレータの解析手法には格子ガス法を用いている.解析系は,カソードおよびアノードのそれぞれのガス流路とガス拡散層,さらに触媒層と高分子膜の機能を合わせた反応層を設定し,それらの積層構造とした.本研究では,アノード側を1流路のサーペンタイン型とした.本研究の特徴である,カソード側の多孔性調湿流路は,流路を2系統にし,それぞれの入口と出口を反対に設置している.2系統の入口を出口の内側に設置した場合をtype1,反対に出口を入口の内側にした場合をtype2,アノード側と同じく1流路の多孔性調湿サーペンタイン型流路をtype3,さらに性能向上の手法として以前提案していたtype3の多孔性調湿ガス流路でガスの入口と出口を周期的に切り替えるものをtype4とし解析対象とした.各構造要素の多孔性のパラメータである空隙率は,反応層を0.8で固定し,ガス流路,ガス拡散層は0.5と0.8の条件とした.反応層とガス流路の初期含水率をS=50[%]とした.解析における性能評価の手法として,出力と等価と仮定している生成水量を用いた. 基準となるtype3と比較すると,type1が最も生成水量が多く,type2,type4の順となった.特にガス流路とガス拡散層を共に0.5とした場合,type4でtype3の約3倍,type2で約5倍,type1で約8倍の生成水量となった.反応層の液水分布で比較すると,type1が最も全体に広く分布していた.すなわち,本研究で提案するカソードの入口と出口を反対に設置する多孔性調湿2系統流路では,2系統の入口を出口の内側に設置すると,この反応に寄与する液水を効果的に拡散させ,発電性能を向上させることができることが分かった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,多孔性調湿ガス流路形成する調湿素材の調湿性,耐久性の実験検証を行う予定であったが,2年目に予定していた多孔性調湿ガス流路の最適構造についいて数値解析による検討を先に行った.本研究で使用した,三次元シミュレータの解析手法には格子ガス(LGA)法を用いている.燃料電池の解析系は,カソードおよびアノードのそれぞれのガス流路とガス拡散層,さらに触媒層と高分子膜の機能を合わせた層として反応層を設定し,それらの積層構造とした.本研究では,アノード側を1流路のサーペンタイン型とした.本研究の特徴である,カソード側の多孔性調湿流路は,流路を2系統にし,それぞれの入口と出口を反対に設置している.この流路に対して2系統の入口を出口の内側に設置した場合をtype1,反対に出口を入口の内側にした場合をtype2,また比較のためアノード側と同じく1流路の多孔性調湿サーペンタイン型流路をtype3とした.各構造要素の多孔性のパラメータである空隙率を変化させ,初期含水率,反応層内触媒分散率を固定して解析を行った.なお,解析における性能評価の手法として,出力と等価と仮定している生成水量(蒸気)を用いた.その結果,基準となる1流路の多孔性調湿サーペンタイン型流路と比較すると,本研究で提案する流路を2系統にし,それぞれの入口と出口を反対に設置する多孔性調湿流路は出力と等価と仮定している生成水量が増大し,特に,2系統の入口を出口の内側に設置すると,条件によっては約8倍の性能向上の可能性を示した.また,この性能向上と燃料電池内部の水分分布,特に反応に寄与する反応層の水分分布との関係も明らかにしている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,昨年度予定しいた多孔性調湿ガス流路形成する調湿素材の調湿性,耐久性の実験検証を行う.多孔性調湿ガス流路は,長期間,余剰生成水を迅速に吸収かつ排出し続けなければならないため,吸水速度,排水速度が速く,耐久性の高さが必要となる.そこで本研究で使用する多孔性調湿材は,プラスチック等のバインダーに調湿粒子(珪藻土,アパタルジャイト等)を混ぜたものとし,素材メーカーに特注で製作してもらう.調湿粒子素材候補の1つである珪藻土は,主成分は二酸化ケイ素(SiO2)であり,珪藻土粒子は,ミクロンオーダーの気孔内にさらにナノオーダーの気孔が存在する二重空隙構造を有する多孔質構造体である.この特殊な穴構造が調湿効果をもたらしていると考えられる.また,昨今,調湿,冷感インナーとして使用されている繊維素材も多孔性調湿ガス流路形成する調湿素材として検討する.素材を選定する上での重要な特性として,吸水性,乾燥性,耐久性がある. 各素材の流路試料を作成し,吸水特性として,吸水率(試料を水に24時間浸し,浸水前の重量と浸水後の重量の差を,浸水前の重量で割ったもの.重量は既存の電子天秤で計測)と吸水速度(試料の一端を水に浸し,水の上昇速度および高さ(毛管力))を調べる.乾燥特性は,含水試料を加熱し重量変化を記録し乾燥速度等を調べる.耐久性は,試料の吸水,排水実験を1セットで繰り返し行い,吸水性,乾燥性の劣化の測定,形状変化を計測する.以上,調湿粒子含有量の異なる各試料における吸水性,乾燥性等を比較し,吸水速度,排水速度が速く,かつ耐久性の高い多孔性調湿素材を決定する.なお,本研究では実機を想定し耐久性に重きを置いた選定を行う.
|
Causes of Carryover |
初年度は,多孔性調湿ガス流路形成する調湿素材の調湿性,耐久性の実験検証を行う予定であったが,2年目に予定していた多孔性調湿ガス流路の最適構造についいて数値解析による検討を先に行った.先に最適な流路形状を決めてから,その形状での調湿性,耐久性を調べるべきだと考え,計画を変更した.次年度は,当初予定していた数値解析による最適形状も再検討しながら,多孔性調湿ガス流路形成する調湿素材の選定を行う.多孔性調湿材の選定候補として,プラスチック等のバインダーに調湿粒子(珪藻土,アパタルジャイト等)を混ぜたものと,昨今,調湿,冷感インナーとして使用されている繊維素材を考えている.プラスチック等のバインダーに調湿粒子を混ぜたものは,素材メーカーに特注で製作してもらう予定である.繊維素材に関しても購入予定であり,次年度繰越金をその費用に充てる予定である.
|