2021 Fiscal Year Research-status Report
磁性カーボンナノ粒子の光発熱効果を利用した高効率 PCR 法の開発
Project/Area Number |
21K03921
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
森本 久雄 東洋大学, 理工学部, 教授 (00385957)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | PCR / ナノ粒子 / 光発熱効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021 年度は,本研究で使用するシグマアルドリッチ社製 磁性カーボンナノ粒子の特性を調べた.この粒子は鉄のコアに炭素を被覆したものであるが透過型電子顕微鏡によって粒子を観察し,鉄のコアのサイズおよび外側の炭素層の厚みを測定した.次にこの粒子を PCR の反応溶液に分散させて通常のサーマルサイクラーで PCR を行い,粒子が PCR におよぼす効果を調べた.PCR で用いられる DNA ポリメラーゼはナノ粒子表面に吸着し失活してしまうことから,これを防ぐために粒子表面を BSA(ウシ血清アルブミン)でブロッキングすることにした.BSA で表面修飾された粒子は,その濃度が十分低い場合には PCR に影響をおよぼすことは無く DNA の増幅量にも変化が無いことが確認された.次に,磁性カーボンナノ粒子の光発熱効果を利用した PCR を行うための実験システムを構築した.本システムでは,磁性カーボンナノ粒子が分散した PCR 反応溶液に Ti:Al2O3 レーザー(波長 800 nm)を照射して溶液を加熱する.一方,溶液が封入された容器(PCR チューブ)は氷水で冷却されたコイル内に設置されており,レーザー照射を止めると溶液温度は減少する.レーザー照射の ON/OFF はコンピュータによって制御された光学シャッターによって行うことが出来る.本システムを用いてレーザーを照射した際の溶液の温度上昇ならびに照射を停止した際の温度減少をサーモカメラで測定した.さらにこのデータをもとに 2 段階 PCR を行うためのシャッターの開閉タイミングについて検討した.本システムによって 2 段階 PCR を行い,ターゲット DNA の増幅に成功した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から本研究での使用を予定していた磁性カーボンナノ粒子が実際に利用可能であることが確認できた.予め粒子表面を BSA(ウシ血清アルブミン)でブロッキングすれば,反応溶液に分散させても低濃度条件下では PCR に影響を与えることはなかった.ただし,今後は 粒子濃度がターゲット DNA 増幅量におよぼす効果について詳細に解析する必要がある.また磁性カーボンナノ粒子の光発熱効果を利用した PCR を行うための実験システムを構築し,2 段階 PCR を行うことに成功した.実験条件についてはさらなる検討が必要であるが,これまでのところ研究はおおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
2021 年度に構築した実験システムを用いて 2 段階 PCR を行い,その実験条件(シャッターの開閉タイミングや溶液の冷却温度など)についてより詳細に検討を行う.本手法によって行われる 2 段階 PCR のターゲット DNA 増幅量,副産物(PCR によって生成したターゲット DNA とは異なるサイズ・配列の DNA 断片)の生成量および PCR の所要時間を評価し,従来法との比較検討を行う.また実験で使用した粒子を磁石によって回収し,その再利用性について解析を行う.さらに本実験システムによって 3 段階 PCR を行うための実験条件についても検討を行う.
|