2022 Fiscal Year Research-status Report
磁性カーボンナノ粒子の光発熱効果を利用した高効率 PCR 法の開発
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21K03921
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
森本 久雄 東洋大学, 理工学部, 教授 (00385957)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | PCR / ナノ粒子 / 光発熱効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022 年度は,前年度に構築した実験システムを用い 2 段階 PCR を行った.本手法により従来法(サーマルサイクラーを用いた PCR)と同等の増幅量を保ちながらプロセス時間を短縮することに成功した.さらに本研究では PCR によって得られた主生成物(増幅対象である DNA 断片)だけでなく副産物(反応中に生成した増幅対象とは異なる配列・サイズの DNA 断片)の生成量も解析した.解析の結果,本手法では従来法に比べて副産物の生成量が少ないことがわかった.前述の通り本手法では従来法に比べて高速でサーマルサイクリングを行っており,これにより副産物の生成が抑制されたものと考えられる. 次に本手法で熱源として使用する磁性カーボンナノ粒子の再利用について検討を行った.ナノ粒子を用いて 2 段階 PCR を行い,その後に反応溶液中の粒子を磁石により集めて上澄み液をピペットで取り除いた.次に粒子を滅菌水でウオッシュし,PCR に必要な各種薬品を加えて再度 2 段階 PCR を行った.再利用した粒子を用いた場合も従来法に比べて高速で PCR を行うことに成功したが,DNA 断片の増幅量は初回に比べて減少した.本研究では DNA 断片の増幅に必要な DNA ポリメラーゼが粒子に吸着して失活することを防ぐために,粒子表面を BSA(ウシ血清アルブミン)でブロッキングしている.初回の PCR において,粒子の発熱に起因して一部の BSA 分子は粒子から離脱している可能性があり,これによって DNA ポリメラーゼが失活し増幅量が減少したものと推察される. さらに本研究では,3 段階 PCR を行うための実験条件について検討を行った.本手法による 3 段階 PCR を行い,ターゲット DNA の増幅に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性カーボンナノ粒子の光発熱効果を利用したサーマルサイクリングにより 2 段階 PCR を行い,サーマルサイクラーを用いた従来法に対して同等の増幅量を保ちながらプロセス時間を短縮することに成功した.本手法では,従来法に比べて副産物の生成量が少ないことがわかった.また増幅量が減少するものの磁性カーボンナノ粒子の再利用に成功した.本手法によって 3 段階 PCR を行い,ターゲット DNA の増幅にも成功しており,これまでのところ研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
既に 2022 年度に磁性カーボンナノ粒子の光発熱効果を利用した 3 段階 PCR の実行に成功しているが,DNA 増幅量,副産物の生成量およびプロセス時間を評価し,従来法との比較検討を行う.また3 段階 PCR においても磁性カーボンナノ粒子の再利用性について検討を行う.2 段階・3 段階 PCR いずれについても,DNA 増幅量の増加およびプロセス時間のさらなる短縮を目指して実験条件の最適化を行う.2 段階 PCR において粒子を再利用した際に増幅量の減少がみられた.その原因として粒子表面の BSA 離脱が考えられるが,この対策についても検討を行う.
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