2021 Fiscal Year Research-status Report
Constructive approach to neural basis for predictive control of gait and posture
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21K03932
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
舩戸 徹郎 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40512869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳原 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90252725)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 姿勢制御 / 予期的姿勢調節 / 小脳 / 学習 / モデル予測制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトや動物は直立や歩行中に将来の自己の状態を予測して動作を生成する。予測動作の生成には自己の身体内部モデルに基づく予測が必要である。内部モデルは自身の運動状態を表すモデルであり、生物はこのモデルを学習的に獲得する。本研究では、このような姿勢制御・運動制御における予測制御系の原理解明を目指して、予測制御系および内部モデルの学習系のモデル構築と動物の神経系における予測制御機構の原理に迫る研究を行っている。本年度は(1)予測可能な外乱に対するラットの直立予測動作の計測と神経メカニズムの検証、(2)直立予測制御モデルの構築とラットの直立姿勢制御動作の評価、(3)学習にかかわる神経系の障害による直立姿勢動作の影響とモデルによる評価を行い、以下の研究結果を得た。 (1)光刺激を与えた後に傾斜外乱を与える環境を繰り返し経験させることで、予測可能な外乱に対するラットの予測的姿勢制御動作を詳細に計測する環境を構築した。さらに、(2)ラットの身体力学モデルとモデル予測制御に基づくラットの姿勢制御モデルを構築し、実験で得られたラットの予測動作を数理シミュレーションと比較した。その結果、モデル予測制御による数理モデルがラットの予測制御をよく再現できることが示された(Konosu, Funato, et al. Front Sys Neurosci. 2021)。 (3)内部モデルの学習に使われる下オリーブ核を薬理学的に障害したラットの直立動作を計測し、健常ラットと比較したところ、下オリーブ核障害ラットでは重心動揺の特徴周波数の低下とパワースペクトラムの上昇がみられた。この結果を基に数理シミュレーションに基づく制御系の定量評価を行ったところ、下オリーブ核障害ラットでは、(予測制御と考えられる)非線形制御機能の低下がみられることが分かった(Funato, et al., Sci Rep, 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究として、〇2足直立中のラットに繰り返し外乱を与えることで、予測動作を詳細に評価できる実験系を構築すること、〇2足直立中のラットの予測動作を対象として、予測制御系を再現・定量評価ができる数理モデルを構築すること、〇予測のための内部モデルの構築に関わる神経系に迫ること、を目標としていた。これらの研究はそれぞれ以下のように進捗している。 〇2足直立中のラットに光刺激を与えた後に床を傾斜させる実験系により、ラットの予測動作を計測できるようになった。ラットは70回程度の傾斜を経験することで、傾斜に対する重心の変動が徐々に少なくなり、経験を予測して動作を行って様子が見られた。これにより、予測と予測を行うための学習を評価できるデータを得ることができた。現在さらに、小脳の局部除去により、予測動作の低下がみられることが分かってきており、予測・学習に使われる神経制御系の構成に迫れると期待できる。このようにラットの予測・学習の実験にかかわる研究は順調に進展している。 〇倒立振子による身体モデルとモデル予測制御からなるラットの予測制御の数理モデルを構築した。さらに数理モデルのシミュレーションを行い、直立中のラットの実験データと比較することで、構築した数理モデルがラットの予測動作をよく再現できることを示した。このように、予測の数理モデルの構築に関わる研究は順調に進展している。 〇ラットの予測及び予測モデルの学習に迫るために、内部モデルの構築に関わる研究を行った。内部モデルの学習には下オリーブ核から小脳に与えられる誤差信号が使われると考えられていることから、下オリーブ核を障害したラットの2足直立動作を計測し、制御系を評価したところ、健常ラットに比べて、予測制御に関わる非線形制御機能の低下がみられることを発見した。このように、内部モデルに関わる研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度までに、2足直立中のラットに繰り返し傾斜外乱を与えることで直立中の予測制御動作の計測と予測制御を行うための学習過程の動作を計測ができた。さらに直立中の予測動作の数理モデルを構築し、ラットの予測動作の数理モデルが再現できるようになった。構築した数理モデルは、内部順モデルに基づいて将来状態を予測し、予測した将来状態までの最適制御を入力するモデルとなっている。学習に基づくこの内部モデルの構築原理の解明を目標とし、(1)ラットの直立実験、(2)学習を伴う予測制御モデルの構築、中心に今後の研究を展開していく予定である。 (1)ラットの実験においては、小脳の局部除去による予測動作の影響を調べる。ラットの小脳中部の局部領域を吸引除去することで、通常の姿勢動作にはほとんど影響がみられないが、光刺激後の傾斜に対する予測動作ができなくなることが、数匹の個体に対する実験で見られてきた。このことは、小脳における内部モデルを用いて予測制御が構築されていることを示唆する。今後さらに除去領域を限定して影響を調べることで、予測に用いられる内部モデルの学習が神経系でどのように構築されているかに迫る。 (2)数理モデルの予測制御に用いる内部モデルは、現在ラットの運動方程式を数理的に与えることで構成している。この内部モデルの構築、感覚情報に基づく機械学習によって行うことで、ラットの数理モデルに学習要素を導入する。内部モデルの学習過程における予測制御動作の変化を調べ、ラットの学習過程の動作と比較を行うことで、ラットの予測制御の学習原理に迫る。
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Causes of Carryover |
当初の予定に比べて、次年度使用額が生じた主な項目は旅費である。この理由は、国際会議等の学術会議がオンラインで開催されることである。オンラインでの開催によって活動のための旅費は当初の予定より抑えられたが、その反面、オンサイトでの交流の機会が減っているため、次年度、さらに積極的に学術交流を行うために費用を使用する計画である。
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Research Products
(8 results)