2022 Fiscal Year Research-status Report
油圧アームの非線形動力学の特徴を駆使したモデル予測制御高速化
Project/Area Number |
21K03934
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
酒井 悟 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (90400811)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 油圧ロボット / モデリング / カシミール関数 / 非線形制御 / 機械力学・制御 / 和圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
変化の遅い系(例:化学プラント)への実装から変化の速い系(例:剛体アーム)への実装へと高速化が進展するモデル予測制御には,対人・対物安全性保証のため,油圧アームへの実装が期待されている(例えば,米国の著名な油圧ロボットでも,特異摂動を介して,モデル予測制御が実装されている). 本研究の目的は,油圧アームの非線形動力学の特徴を駆使して,非線形圧力ダイナミクスの近似を介さず「厳密に,かつ,高速に,」モデル予測制御の油圧アームへの実装を解決する提案解法の有効性を実験的に明らかとすることである. 本年度は,4個の手順①から手順④までから構成される提案解法による高速化(汎用計算機を用いた非線形モデル予測制御器の閉ループ系制御実験)と装置製作(2自由度)を達成した.実装された汎用計算機は非線形圧力ダイナミクスを無視していないにも関わらず,視覚検出器(カメラ)と接続可能であり,かつ,油圧アーム実機は全て市販の構成要素(ピストン,弁,配管など)を有するため,汎用性の点でも(世界的に比較しても)非常に有利と期待される.なお,4個の手順は以下の通りである.手順①:等価変換(圧力より変化の遅い量への座標と入力変換・ハミルトン関数置換),手順②:切り離し(近似を介さず厳密に,制御対象を4次系から3次系に低次元化),手順③:積分器同一視 (近似を介さず厳密に,制御対象を3次系から2次系に低次元化),手順④:目的関数を含む無次元化(近似を介さず厳密に,制御器の時間と状態を無次元化).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度当初計画は,手順③と手順④の有効性の実証+装置製作(2自由度)であった.一方,2022年度の進捗は以下の通りであった. ◎手順③と手順④の有効性の実証を確認した.具体的には,先行して油圧アームの一部と等価なダイナミクスを有するDCサーボモータを対象として手順①から手順④までに基づく提案制御器の実装と検証(VerificationとValidation)と制御実験を実施した.続いて実際の油圧アームの全体を対象として手順①から手順④までに基づく提案制御器の実装と制御実験を実施した.いずれの対象でも(非線形圧力ダイナミクスを無視していないにも関わらず)目標サンプリング周期1000Hzで実装(視覚器と接続できる汎用計算機)が達成され,一定の条件のもと,原点の漸近安定化・外乱抑制が初めて達成された.一定の条件についての解析・緩和は2023年度の課題である. ◎装置製作(2自由度)を実施した.既存制御器ではなく提案制御器との接続は2023年度の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予想を超えて油圧アームの非線形モデル予測制御の重要性は高まっているため,最新報告を確認しつつ,新たに高速化された提案制御器と製作された装置から構成される閉ループ系を用いてより高い制御性能を達成することが最優先である.特に,上記の一定の条件についての解析・緩和・(新しく製作した2自由度装置に対する)提案制御器との接続は2023年度の課題である.
同時に,手順④については,油圧アームに限らない制御対象(DCサーボモータなど),モデル予測制御に限らない高次制御器(LPV制御器など)の場合など広い応用範囲を有するため,「一般論の構築」(通常の物理学には存在しなかった目的関数を前提とする第2の無次元化としてのπ定理改良)に加えて,2022年度の進捗から重要性が明らかとなった「数値的側面に特化した第3の無次元化の(油圧アームを例題とした)調査」を推進する.
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