2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of the resonator automatically follows excitation frequency for a high performance vibration-powered generator
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21K03937
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 卓見 九州大学, 工学研究院, 教授 (40274485)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自動同調 / 共振 / 振動発電 / 受動型制御 / 非線形振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
車両や人間の通行,機械の運転などにより不可避的に発生する振動を利用した振動発電はメンテナンスフリーであることが大きな特徴であり,機械装置やインフラ設備のモニタリングなどスマートシステムの個別電源としての利用が多い.一方で,振動発電は加振の振動数が振動体の固有振動数に一致する共振状態では高効率の発電が実現できるものの,加振振動数が固有振動数から離れるにつれ急激に発電効率が低下する.本研究では,加振振動数の変化に対して非常に簡単な機構で振動特性を変化させ,制御装置を組み込むことなく加振振動数に自動的に共振状態が追従する振動機構を提案・実現し,高効率の振動発電に有効な装置の基本技術を確立する. 本研究で提案している装置の主要要素は,曲げ-ねじり連成振動が生じる板状振動体であり,この連成振動に起因して振動体が振動方向と垂直にも動き板状の長さが変化することで,加振振動数に追従するようにその固有振動数を変化させる特徴を持つ.ただし,この現象が生じる基本原理が不明であり,現象の再現も不安定であることが大きな課題である. 令和3年度は,高速度カメラを用いた現象の詳細な解析と,現象を再現できる振動モデルの構築およびそのモデルを用いた数値計算の両面から,自動共振追従現象の基本原理の解明を試みた.その結果,振動モデルの構築において,板状振動体の中間に存在するクリアランスに加え,根元支持部にもわずかなクリアランスを考慮することで,自動共振追従現象,特に共振に近い加振状態で停止する現象が再現できることが明らかになった.この現象の解明は提案する機構の肝の部分に相当するものであり,研究を進展させる大きな一歩と判断している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定に従い,(1)複数台の高速度カメラを用いて振動体の振動を多方面からの同時測定する実験的アプローチ,(2)実験結果を再現する振動モデルを構築し時刻歴応答を実行する数値的アプローチの2方向から自動共振追従現象の解明を試みた.特に(2)の振動モデルにはクリアランスの非線形性と,振動体の曲げ-ねじり連成振動に存在する2次以上の非線形性を考慮して非線形時刻歴応答計算を実行しつつ,実際の現象との比較検討を試みた.しかしながら,これらのアプローチからは自動共振追従現象,特に共振状態で振動が維持する現象が再現できなかった.その後,いくつかの仮説を検討した結果,板状振動体中間に設定したクリアランスだけではなく,板状はり根元支持部にもわずかなクリアランスが存在し,これら2つのクリアランスと板状振動体との接触タイミングの違いにより,共振状態への移動と共振状態に達した際の停止,すなわち,自動共振追従現象が実現されていることが判明した.ただし,以下の3つの理由で想定より多くの時間を要したため想定よりやや遅れているとの評価とした. (a)根元支持部のクリアランスは小さな値でも敏感に影響するため,数値計算でその有効性を確認するのに時間を要した.(b)実験から根元クリアランスの影響を確認しようとしたが,クリアランスがあまりに小さいため高速度カメラの映像から確認できなかった.(c)新型コロナ第6波のため夏の時期に研究を遂行できなかった. 根元支持部のクリアランスの存在とその重要性は年度末に近い時期に判明した.そのため,想定より進捗がやや遅れており学会発表等の実績をあげることができなかった.しかしながら,根元支持部のクリアランスは研究の肝になる部分であると考えており,令和4年度は大きく進展すると予想している.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究結果から根元支持部のクリアランスが自動共振追従現象に大きな影響を与えていることがわかってきた.ただし,数値計算上のみでの確認に留まっており,実験的検証やさらなる理論的裏付けが必要となる.令和4年度は以下の手順で研究を遂行する. (1)現状の装置を数値計算のためにモデル化すると,自動共振追従現象を実現する根元クリアランスは非常に小さい値となる.事実,実験でもその存在と効果を確認できなかった.そこで,装置の寸法や構造,寸法の大幅に見直しを図る.具体的には,根元クリアランスが高速度カメラの拡大画像で確認できる程度の大きさで自動共振追従現象を実現できる装置の構造,規模,寸法を新たに見出す.その際には数値シミュレーション積極的に活用し,様々な構造,形状,寸法でのモデルを検討して新しい装置の設計諸元の設定を進めていく. (2)新しい装置を用いた実験を行い,根元クリアランスの影響を実験的に確認する.特に,根元,中間と振動体との接触タイミングの相対的関係が,自動共振追従現象,特に共振に近い状態を保持するする現象に大きく関わっていると見込んでいる.高速度カメラ等を用いた実験でその現象を確認・検証する. (3)自動共振追従現象に対する最適設計法を確立する.構築した振動モデルを検討し,かつ数多くのパラメータスタディを行うことで共振追従現象の物理的本質を見極める.その上で,根元クリアランスを含め,自動共振追従現象に本質的な影響を与えるパラメータを抽出し,同現象を効果的に実現するための最適値を導くことで本装置の最適設計法を確立する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で,研究発表,調査等の旅費を使用する機会が失われた.また,実験計画も予定に従って実施できず,実験装置のセットアップ等に要する費用も想定していた額ほど使用できなかった.これらの金額は次年度への繰り越しとなった. 今後,実験装置の大幅な変更を計画しており,新しい装置の立ち上げのための費用に充てたい.また,新型コロナウィルスによりオンラインに限定されていた学会の開催も対面で実施されることが予想されるため,より多くの研究成果を上げ,学会,講演会への出席も当初予定より積極的に行っていきたい.
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Research Products
(1 results)