2022 Fiscal Year Research-status Report
衝突系に発生する階段状カオス転移現象のメカニズム解明とその工学的応用
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21K03942
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Research Institution | Oita National College of Technology |
Principal Investigator |
軽部 周 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (70370054)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 階段状カオス転移現象 / バウンシングボール / 非線形現象 / 衝突振動系 / パンタグラフ系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,振動板上を跳ねる球(バウンシングボール系)に生じる階段状カオス転移現象(ステップワイズ・クライシス)の発生メカニズム解明と,得られた知見の工学的問題への応用を目的としている. 研究実施計画では「課題1:階段状カオス転移現象の発生メカニズムの解明(2021~2022年度)」,「課題2:機械装置における階段状カオス転移現象の確認(2022~2023年度)」の2つの課題を設定している. 2022年度は,課題1について,階段状カオス転移現象の発生メカニズムについて詳細な解析を行い,本転移現象の発生条件が,ボールが最大到達高さに達する頻度と関連することを明らかにした.また,当初予測していたボールと振動板との衝突遍歴との関連は確認できなかった.本成果の一部は,AIP ADVANCE誌に掲載された.また,課題2について,地下鉄のパンタグラフ系を模擬した実験装置を新規製作し,階段状カオス転移現象が機械装置に発生するかについての実験的検討を開始した. 以下,本研究の新規性・重要性について述べる.階段状カオス転移現象は本研究で定義した新しいカオス転移現象であり,発生メカニズムについての詳細な議論は殆ど行われていない.また,バウンシングボール系という最も単純な衝突振動系に発生する現象であるため,歯車系など他の衝突振動系にも内在している可能性がある.従って,本転移現象について得られた知見は,他の衝突振動系に広く適用できると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に記載した「課題1:階段状カオス転移現象の発生メカニズムの解明(2021~2022年度)」,「課題2:機械装置における階段状カオス転移現象の確認(2022~2023年度)」について研究を行った. 課題1について,階段状カオス転移現象の発生メカニズムについて実験・数値シミュレーションの双方から検討した.ボールの最大到達高さに着目して挙動を詳細に観察した.その結果,転移現象が発生するまでは最大到達高さが一定であるが,ボールが最大到達高さに到達する回数は振動板の振動周波数の増加に従い増えていくこと,跳ね返り高さの殆どが最大到達高さに達し飽和すると階段状カオス転移現象が発生し,次の段階へと移行することが明らかとなった.これらの結果は,当初予測していなかったものである.本結果の一部は論文として,AIP ADVANCES誌に投稿し,掲載された.また,振動板の振幅の変化が系に及ぼす影響について実験を行い,これも数値計算に沿う結果になることを確認した. 課題2について,地下鉄のパンタグラフ系を模擬した衝突振動実験装置を新たに製作した.本装置により課題1と同様の制御方法で掃引実験を行ったところ,振動変位が急激に増加する分岐現象が実験から確認できた. 以上から,本研究は実施計画に沿った形で順調に推移していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
1.「階段状カオス転移現象の発生メカニズムの解明」について引き続き研究を行う.振動板の振幅の変化が階段状カオス遷移現象に及ぼす影響について更に研究を進め,投稿論文としてまとめる.また、ランダム波入力によるカオス転移現象の変化について検討する. 2.「機械装置における階段状カオス転移現象の確認」について研究を行う.製作したパンタグラフ系を模擬した実験装置上に発生する分岐現象について詳細な観測を行い,バウンシングボール系で観測された階段状カオス転移現象との比較を行う.パンタグラフ系(機械振動系)はバウンシングボール系とくらべて衝突に伴う反力が大きく,摩擦の影響もあり,単純な比較が困難であるが,実験装置のばね定数を可能な限り小さくすることでバウンシングボール系の挙動に近づくものと考えられるため,ばね定数の小さい場合についての実験・数値計算を行い,階段状カオス転移現象と同様の現象が発生するか確認する.また,同様の転移現象が発生していると認められない場合は,その理由について考察する.
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Causes of Carryover |
【理由】研究の進展に伴い,当初予定していなかった計測用変位センサの変更が必要となったが,当該年度の残予算では購入できなかった.次年度の予算で購入する場合,成果発表用の予算が不足する怖れがあり,未使用として残した. 【使用計画】次年度予算で計測用変位センサの追加購入を行った際に不足する物品費,旅費等に使用する.
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Research Products
(1 results)