2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03981
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
菅原 研 東北学院大学, 教養学部, 教授 (50313424)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 群ロボット / 構造物構築 / 空間構造形成 / 化学シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、群ロボットが「ブロックの運搬と局所的な着脱を常に行うことで、動的平衡状態で構築される構造物」を可能とする枠組みの中で、静的安定構造物がもたない特性(特に修復、成長、適応が適切に発現する特性)を有する動的構造物を構築するロボットシステムを開発することである。 今年度は化学コミュニケーションならびに化学反応を活用することで、構造物の部分的な損壊に対する修復ならびに構造強化に関する基礎的な研究を行った。2種2層のブロックからなる構造物を題材として、2種類の仮想的な化学シグナルとそれらの仮想的な化学反応を応用して、小規模な損壊に対する修復と、大規模な損壊に対する構造強化を伴う修復を可能とするしくみを発案し、コンピュータシミュレーションにより、その有効性を検証した。化学シグナルの拡散により、これまでのシステムに比べ、修復に至るまでの時間が短縮できること、化学反応の導入により、より強固な修復が可能になることを明らかにした。 実機による検証実験については、プロジェクタを用いて物質の「種類と量」を「色と明度」で表し、ロボットのカラーセンサを化学センサに見立てることで、化学コミュニケーションを光学系で疑似的に取り扱うシステムの開発を進めてきた。今年度は、大型モニタとマルチタッチフレームを組み合わせたシステムを発案・構築し、簡便性と精度の観点から考案したシステムの有用性が高いことを確認した。 また、散在するブロックを収集して構造物を構築するアルゴリズムを発展させて、充填されているブロックを押しのけることで空間構造を形成できることも明らかにした。これまで取り扱ってきたアクティブブロックにより空間構造の骨組みを構成し、そこを中心とした領域のブロックを押し出すことで任意の形状の空間構造を形成できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の課題であった「能動的な負荷分散」について、成立する条件を広げることはできたものの、当初立てた目標に達していない。また、化学シグナルの導入においても、単純な反応だけでなく、カスケード反応も応用することを計画していたが、現時点ではまだ十分に活用できていない。ただ、一方で空間構造形成への応用という新たな広がりが見えてきたことから、部分的に計画以上のことができている面もあると考えている。なお、間接的な理由ではあるものの、大学の改組ならびにキャンパス移転といった学内事情への対応のために、研究時間が十分に確保できなかったことも一因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
「能動的な負荷分散」の実現に向けて、ブロック間の化学コミュニケーションのみならず、カスケード反応をより積極的に導入していく。実機実験についてもタッチフレームを有効活用することでより、小規模ながら確実に検証実験を進めていく。2022年度に新たに展開した「空間構造形成」については、パフォーマンスならびに精度を高める研究も進めていく。学内事情である改組およびキャンパス移転により生じた研究時間の問題も次年度は改善されることが十分見込める。
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Causes of Carryover |
コロナへの対応で学会出張に引き続き慎重な姿勢で臨んだため、出張旅費が当初の見込みに対し、少額で収まっていること、実機実験が当初の予定に比べ、小規模で行われていることが主たる原因である。今年度は多くの学会が対面で実施されることから、旅費の支出は増える見込みである。また実機実験については規模をより大きくした形で実施する。ただし、部材の価格が高騰していることから、部材の調達においては慎重に選定しながら購入していく予定である。
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