2021 Fiscal Year Research-status Report
Effects of surface modified nano carbon materials by pulsed power on polymer electrolyte fuel cell
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21K04010
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
今坂 公宣 九州産業大学, 理工学部, 教授 (40264072)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | パルスパワー / 表面改質 / ナノカーボン / 固体高分子型燃料電池 / オゾン / 官能基 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、パルスパワー技術を用いてカーボンナノチューブ(CNT)等のナノカーボンの表面改質を行うことにより付加価値の高い材料として創製し、固体高分子型燃料電池(PEFC)の電極材料として応用することを目的としている。本年度はナノカーボン材料として多層カーボンナノチューブ(CNT)とカーボンナノホーン(CNH)を用いた。パルスパワー技術によるバリア放電の繰り返し周波数を300Hzとし放電時間(30分、60分)をパラメータとして酸素雰囲気中でのバリア放電によりオゾンを生成した。オゾン濃度は約300ppmであった。ナノカーボンのオゾン暴露により表面改質を行い水中分散性を観察した。その結果、30分オゾン暴露したCNTの分散性は2 週間程度維持していたが60分オゾン暴露したCNTの場合は1週間程度であった。一方、CNHの30分オゾン暴露の分散性は1週間程度だったが60 分オゾン暴露の場合には2週間程度維持していた。このようにオゾン暴露時間と分散性の対応関係では、CNTとCNHで違いがあった。またX線光電子分光法(XPS)を用いて表面分析を行った。その結果、放電周波数300Hz、オゾン濃度300ppm、オゾン暴露時間30分および60分の条件下でのオゾン暴露によってCNTとCNHのどちらも表面に結合している酸素原子量が減少することがわかった。CNTの場合には未処理の場合と比較してオゾン暴露時間30分および60分でそれぞれほぼ50%程度に半減した。一方、CNHの場合には未処理の場合の約80%程度に減少した。さらにオゾン暴露後のCNTとCNHをPEFCの電極材料として用いて出力特性試験も行った。本研究成果を踏まえて放電周波数とオゾン濃度の関係、オゾン暴露に対するナノカーボンの水中分散性およびXPS分析との対応並びにPEFC出力特性との関連性を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するために2021年度は研究計画項目に基づいて(1)高繰り返しパルスパワー放電を利用したナノカーボンの表面改質に関する表面官能基の導入およびナノカーボン表面状態の観察および分析、(2)固体高分子型燃料電池の出力特性試験についての研究を遂行した。 研究計画項目(1)については、高繰り返しパルスパワー電源を購入して研究を行う予定であったが世界的な半導体不足によるパルスパワー電源製造への影響として納期の不確定が生じたため購入を断念し、現有している自作のパルスパワー電源を改良することでパルスパワー放電(バリア放電)の周波数制御の対策を行った。このバリア放電によるオゾン生成を利用してナノカーボン材料であるCNTおよびCNHの表面改質の研究を行なうことができた。また表面改質の観察および分析として水中分散性およびXPSによる表面官能基に関する基本的な分析も実施することができた。 研究計画項目(2)については、PEFCの出力特性試験における電極材料の最適な組み合わせを検討するために表面改質ナノカーボンと未処理のナノカーボンを用いて出力特性試験を行った。 なお、研究計画項目(1)については、当初購入予定の高繰り返しパルスパワー電源を利用することはできなかったが、自作のパルスパワー電源の改良により放電周波数の制御をある程度実現できたため、当初の計画を概ね達成できている。しかし、バリア放電生成オゾンによるナノカーボンの表面改質に対して、オゾン濃度やオゾン暴露時間、ナノカーボン材料の種類によって表面改質効果が異なる結果が得られたため継続して調査する予定である。研究計画項目(2)については、作製した電極を用いてPEFCの出力特性試験を行ったが再現性があまり認められなかったため、作製条件等を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究内容を継続してパルスパワー放電としてバリア放電を利用したナノカーボン材料の表面改質技術の効率化および固体高分子型燃料電池の出力向上の観点より、研究計画項目(1)高繰り返しパルスパワー放電を利用したナノカーボンの表面改質および(2)固体高分子型燃料電池の出力特性試験について研究する。また、(3)固体高分子型燃料電池の出力特性における表面改質ナノカーボンの効果の検討や出力向上に関する理論的解析についての研究も行う予定である。 研究計画項目(1)については、酸素雰囲気中でのバリア放電の周波数を最大300Hz程度で制御し、放電周波数とオゾン濃度の関係を調べる。また放電時間に対するオゾン濃度やオゾン暴露時間とナノカーボンの表面改質状態(表面に結合した酸素量など)の関係性などをXPSを用いて定量分析する。研究計画項目(2)については、これまでの研究成果より表面改質ナノカーボンを固体高分子型燃料電池の電極材料として用いる際の電極の組み合わせが出力特性に影響することが明らかになっているため4種類の組み合わせで電極を作製する。その際に必要となる電解質溶液、触媒として利用する白金およびナノカーボン材料の混合割合も検討する予定である。研究計画項目(3)については、作製した固体高分子型燃料電池電極のインピーダンス測定(Cole-Colo プロット)により出力特性に対する4種類の電極の組み合わせの評価を行う。また過電圧分離法による各種損失(活性化過電圧、抵抗過電圧、拡散過電圧)の理論的な検討を行うことで出力向上のための電極作製の評価を行う。
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Causes of Carryover |
2021年度は、バリア放電により生成したオゾンによる2種類のナノカーボン材料(多層カーボンナノチューブとカーボンナノホーン)の表面改質およびバリア放電を利用して生成したオゾン濃度測定、オゾン暴露後のナノカーボン材料の表面改質状態の分析並びに固体高分子型燃料電池の電極作製と出力特性試験などを行った。また、現在までの進捗状況の項目で説明した通り、当初、購入を予定していた高繰り返しパルスパワー電源の購入が困難になったために現有している自作のパルスパワー電源を改良することで対応した。そのため、これら一連の研究で当初購入を予定していた高繰り返しパルスパワー電源の費用を研究遂行上、支障のない範囲で主に固体高分子型燃料電池の電極作製に必要な各種消耗品(ナノカーボン材料、白金触媒、電解質、カーボン基盤材など)に使用したため次年度使用額が生じた。次年度使用額の主な用途は、パルスパワー電源回路用の消耗品や固体高分子型燃料電池の電極材料等の購入に用いる予定である。
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Remarks |
九州産業大学教員詳細情報 https://ras2.kyusan-u.ac.jp/kyshp/KgApp/k03/resid/S001558
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