2023 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波レーダ法によるコンクリート構造物内部異常の定量的推定を実現する検査技術
Project/Area Number |
21K04092
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高山 潤也 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (50323796)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マイクロ波レーダ / 非破壊検査 / 逆問題 / 非線形信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「マイクロ波レーダ法によるコンクリート構造物内部異常の検査技術」を確立し,「劣化を端緒としたコンクリート構造物事故の未然防止」を図る解決手段を提供することにある.マイクロ波レーダ法はコンクリート構造物検査技術のひとつとして浸透しているが,観測情報が十分に活用されておらず,精度が不十分である.そこで新たな信号処理技術を提案して観測波形中の未活用情報を抽出し,さらに新たに構築するマイクロ波伝播モデルを組み合わせ,「内部構造の諸性状の高精度定量推定」=「鉄筋・配管の径識別」・「空隙の位置・形状同定」および「金属・樹脂・空隙の弁別」・「錆度評価」を実現する.
研究3年目は,マイクロ波の「減衰・透過の挙動」,「正反射・散乱反射の特性」および「アンテナ放射の指向特性」を考慮に入れた「波形包含情報の活用のための技術の高精度化」の検討を継続した.具体的な検討項目のひとつ目は「マイクロ波伝播モデルの緻密化」に基づく「埋設物体の性情推定」である.マイクロ波の反射現象は主に正反射波のみが考慮されてきたが,実観測波形とは整合しておらず,そこで散乱反射成分を積極的に考慮して伝播モデルの緻密化を図った.この結果,実観測波形と整合するモデルが構築でき,それを基に反射波形形状から埋設物サイズを推定する新たな信号処理手法を構築するに至り,推定精度を従来に比較して2倍程度まで高めることが可能となった.また検討項目のふたつ目は「探査対象表面形状の影響評価」であり,コンクリート構造物表面の形状が探査に及ぼす影響について検討した.ここでも「緻密化されたマイクロ波伝播経路モデル」を活用して伝播現象分析を試みたところ,モデルに基づいた伝播時間分析結果が実験値と定量的に一致することを明らかにし,よって従来は困難であった複雑な表面形状を備えた探査対象へのマイクロ波レーダ技術の適用可能性を明らかにするに至った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,コンクリート内部構造に関する諸性状を「誰もが容易かつ高精度に定量推定」できる検査技術の実現を,1.波形包含情報の活用のための基盤技術構築 ⇒ 信号処理技術と伝播モデルの完成,2.異常部位の定量推定技術の構築 ⇒ 逆問題的手法に基づく性状推定,3.漸進学習型信号処理機能の実現 ⇒ 学習・更新による推定精度の向上をサブ課題に据え,基盤技術構築とその発展的応用に基づき達成する計画としていた.
研究期間初年度は「波形包含情報の活用のための基盤技術構築」に関する原理的な検討を実施して概ね計画通りの進捗であったが,その検討結果より,マイクロ波の伝播特性のモデル化には,研究当初に想定していたよりもはるかに複雑な現象のモデル化が必須なことが判明した.そこで研究2年目では,上記の課題1の精度を高めることに注力することとし,結果としてマイクロ波伝播現象を緻密にモデル化することに成功した.それを受けた研究3年目では,埋設物性状の高精度推定を実現する方法論の基礎を構築するに至り,研究の進捗にはやや遅れをともなっているものの,推定の高精度化という当初目標に沿った結果を得るに至っている.
今後は,定量的な性状推定技術としての完成形を確立するとともに,漸進学習型信号処理技術について検討し,適応的な推定精度向上手法の検討を進めていく.
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Strategy for Future Research Activity |
課題2「コンクリート構造物内の異常部位の定量推定技術の構築」を初めに完成させたうえで,課題3「漸進学習型信号処理機能の実現:学習・更新による推定精度の向上」へと進める.
具体的には,ここまでに得た基盤技術:「反射波の伝播時間・位相変化評価技術」と「散乱特性を考慮したマイクロ波伝播モデル」を発展的に融合した性状推定技術を構築するものとし,反射波の伝播時間・位相変化評価と伝播経路推定を交互に繰り返して,相互補間的に推定精度を向上させる新たな信号処理の方法論を構築する.その後は,信号処理方法へ学習機能を付与することで,継続的に推定性能の向上を図るための機能も実装していく計画である.
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Causes of Carryover |
実験機器の有償アップデート(50万円程度)の展開が延期され,当該分の予算額が未使用であった.また当初の研究計画に対して学外での実験頻度が減少したため,そのための旅費や人件費が予定額を下回っている.当該費用については,次年度の実地実験実施時に機器購入と旅費に充てるほか,延期された実験装置の有償アップデートに充てる計画である.
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Research Products
(1 results)