2021 Fiscal Year Research-status Report
火山観測に用いられる超低周波音測定器の感度校正法の開発
Project/Area Number |
21K04101
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 桂輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90613993)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 超低周波音 / 音響 / 校正 / マイクロホン |
Outline of Annual Research Achievements |
超低周波音は空気による減衰が小さいため、音源の情報を遠方まで伝えるという特性がある。これを利用し、火山活動等を遠方から観測する方法が現在研究されている。しかし、現在1 Hz未満においては、測定に用いるマイクロホンの感度校正法が確立していない。本研究の目的は、超低周波音計測の信頼性の向上のため、トレーサビリティを確保したマイクロホン校正を0.1 Hz~1 Hzの周波数範囲において可能にすることである。 本研究では、超低周波数領域に特化した新しいマイクロホン感度校正法として、液柱型音圧発生装置を用いた校正システムの開発を行う。液柱型音圧発生装置は液柱圧力計の原理を応用して独自開発したもので、液柱の高さの変動により圧力変動、すなわち音圧を発生させる。低い周波数ほど安定した音圧発生を見込める方式であり、従来の校正法においては発生音圧が不安定となりやすい1 Hz未満の周波数域でも、安定した校正が可能であると考えられる。 本年度は、予備実験において発生していた問題である、液柱型音圧発生装置による発生音圧波形の歪みへの対処に主に取り組んだ。検討の結果、装置を構成する加振器とその振動変位の測定方法に問題があることを突き止め、それらの改良により、0.1 Hzまで十分に歪みの小さい正弦波音圧を発生させることに成功した。 この成果により、従来の校正法ではS/Nが著しく悪化する1 Hz未満においても、高い精度で校正が可能となる。本研究の最終的な目標である、下限0.1 Hzまで0.2 dBの不確かさでの校正に対してはいまだ中途であるが、現状までの研究成果について、日本音響学会2022年春季研究発表会において発表を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終的な目標である、下限0.1 Hzまで0.2 dBの不確かさでの校正に向けて、計画通り順調な進捗状況である。1年目の今年度の時点で、マイクロホン音圧感度校正システムの基盤となる音圧発生機構の安定性を、目標周波数である下限0.1 Hzまで確保できており、これ以降の研究開発を十分な再現性の元スムーズに推進できる見込みが立っている。また、±1 dB程度の精度での比較であるが、従来法による1 Hzでの校正値との整合性も現在までに確認できている。これは開発中の校正法の理論が正しいものであることを示しており、校正法の信頼性の検証も順調に進んでいると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発中の校正システムによる校正値の信頼性検証、及び校正の不確かさの評価を進める。信頼性検証としては、主に従来法との連続性の検証をより精密に行う。従来法との精密な比較のためには、従来法によって精密な校正が可能な、標準マイクロホンと呼ばれる特殊なマイクロホンを従来法及び開発中の校正法の両方で校正する必要がある。現状の開発中の校正システムは、超低周波音計測用マイクロホンに対応したものであり、形状の異なる標準マイクロホンをそのまま適用することはできない。そのため、開発中の校正システムに標準マイクロホンを適用可能にする機構の開発を行う。また、不確かさの評価としては、発生音圧算出式の不確かさ、校正中の温度変化の影響、外部ノイズの影響など、校正値に影響する不確かさの要素を一つずつ精査し、校正全体の不確かさを算出する。
|
Causes of Carryover |
申請時の計画では、初年度にFFTアナライザの購入(約180万円)を行う計画であった。しかし、交付決定額に多少の減額があったこと、及び本年度の研究により校正システムからの出力信号の歪みの抑制に成功し、高度なフィルタ機能を持つFFTアナライザを使用する必要性が薄まったことから、購入は見送ることとした。次年度以降、校正システムを構成するレーザ干渉計の高精度化のための装置購入に使用する予定である。
|