2021 Fiscal Year Research-status Report
フェイルソフトに基づく制御システムのメンテナンス時の稼働状態の移行過程設計
Project/Area Number |
21K04118
|
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
陶山 貢市 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80226612)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 制御システム / メンテナンス / 安全性 / フェイルソフト |
Outline of Annual Research Achievements |
製造物責任や国際規格上、製造者は製品の適切なメンテナンス手法を使用者に告知する義務を負っている。しかし、国際規格では部品交換などの必須作業が列挙されているだけで、それらの作業を実施するための環境と通常の稼動状態との間の移行に関しては何も記載されていない。そのような稼働状態の移行は現場技術者の経験に頼っていることが多く、特にプロセス産業ではメンテナンス時に事故が発生する原因となっている。本研究では、工業製品・生産現場の制御システムのメンテナンス開始前及び終了後の稼働状態の移行に関して、メンテナンス対象部分のアクチュエータ出力を段階的に変化させつつ、各段階で残されている機能によって終着点に徐々に近付けていく「フェイルソフト」の考え方に基づいて、移行過程の安全設計手法を確立し、さらにそれを組み込んだメンテナンス支援技術を世界に先駆けて確立して、将来、国際規格に反映させることを目的とする。 令和3年度においては、第1、第2の雑誌論文により、出発点及び終着点の稼働状態の制御器の設計法を発表した。 また、出発点と終着点の間に複数の中間的な稼働状態が存在する場合、全体としは多段階の移行となるが、その大きさ・過酷さをトータルとして評価する切替L2ゲインを導入し、その上限値が解析・設計に都合の良いLMI条件で求められることを示した。さらに、それを多段階移行の評価指標とすることで、出発点から終着点までトータルとしての大きさ・過酷さをできるだけ小さくするような、途中の稼働状態を実現する制御器の初期値の決定法を確立した。その初期値決定法は、本研究で確立する移行過程の安全設計手法の中で重要な役割を担う。この研究成果は、令和4年度以降に雑誌論文で発表する予定で、現在、準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出発点及び終着点の稼働状態を実現する制御器の設計法を第1、第2の雑誌論文により確立した。また、出発点と終着点の間に複数の中間的な稼働状態が存在する場合、出発点から終着点までの多段階移行の大きさ・過酷さをトータルとして評価する切替L2ゲインを導入し、実用上重要なその上限値の性質を明らかにすることができた。さらに、それを評価指標とすることで、途中の稼働状態を実現する制御器の初期値決定法を確立した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に導入した多段階の移行の大きさ・過酷さをトータルとして評価する切替L2ゲインに基づいて、途中の稼働状態を実現する制御器の設計法を確立する。また、令和3年度に確立した途中の稼働状態を実現する制御器の初期値決定法も含めて、稼働状態の多段階移行過程の安全設計をソフトウエアの形で具現化する予定である。さらに、得られた成果は随時発表すると同時に、国際規格への反映を目指す活動として、国際的な場やSNSを通じた国内外の規格関係者への研究成果のアピールも積極的に行う。
|
Causes of Carryover |
第1、第2の雑誌論文を発表した国際会議へはともにリモート参加であったため、海外渡航費の支出が無かった。未使用の海外渡航費は、令和4年度以降、研究発表のための海外渡航に使用する。 また、コロナ禍による半導体不足に起因したコンピュータ全般の納期の乱れ・不確実さ、及びOSとしてWindows11を搭載したPCワークステーションの未発売などを考慮して、当初は令和3年度の予定であった高性能なPCワークステーションの購入を令和4年度に見送った。これによって、計算機環境の整備自体は当初の計画よりも遅れることとなった。しかし、令和4年度後半以降にソフトウエア開発及び計算機シミュレーションに本格的に取り組むことで、研究期間全体を通した研究遂行上、問題はない。
|
Research Products
(2 results)