2021 Fiscal Year Research-status Report
オープンな大規模ネットワーク化システムに対する人間共存型自律分散制御法の開拓
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21K04121
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 直樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (80637752)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 分散最適化 / 分散制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
超スマート社会において重要な役割を果たす大規模ネットワーク化システムでは、多種多様なサブシステムとユーザーとの相互作用が時間とともにダイナミックに変化するオープンな構造を有している。2021年度は、このような環境やネットワークの構造がダイナミックに変化していくオープンなマルチエージェントシステムにおいて、エージェント間の局所的な情報伝達により、マルチエージェントシステム全体としての大域的な目的関数を最適化する分散最適化法について考察した。2021年度はエージェント間の通信回数や量子化誤差を考慮した分散最適化アルゴリズムを導出し、それらの収束性に関する理論的考察を行った。また、事象駆動型の分散適応勾配降下法を提案し、目的関数に関するリグレットが劣線形となることを示した。また、非凸最適化問題に対する分散量子化アルゴリズムを提案し、エージェントの推定値が非凸最適化問題の臨界点へ収束することを示した。さらに、ネットワークを構成するエージェントの入れ替わりを考慮した分散オンライン最適化法を提案した。これらの研究成果により、多種多様なサブシステムとユーザーとの相互作用が時間とともにダイナミックに変化する大規模ネットワーク化システムの制御法や最適化法の構築の基礎を築くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はおおむね順調に研究を進めることができた。2021年度はエージェント間の通信制約を考慮した分散最適化法や目的関数が時間とともに変化する場合を考慮したオンライン最適化法などを提案した。従来の分散最適化法では、アルゴリズムの各反復において通信を行うことが仮定されている。しかし、バッテリなどのリソース資源が限られているセンサネットワークなどでは、高頻度の通信はネックとなる。そこで、2021年度の研究では、不必要な通信をできるだけ省く事象駆動型の分散オンライン最適化アルゴリズムを提案し、従来のオンライン最適化アルゴリズムと変わらない収束性を保ちつつ、通信回数を削減できることを示した。また、多くの分散最適化法では実数値の通信が行えることが仮定されているが、現実の通信では連続量のデータを送ることはできず、量子化された値が用いられる。また、機械学習などに現れる最適化問題は目的関数が必ずしも凸であるとは限らない。そこで、2021年度の研究では、非凸最適化問題に対し、通信データの量子化を考慮した分散最適化アルゴリズムを提案した。さらに、大規模なネットワーク化システムでは、ネットワークを構成するエージェントの数が多くなるため、エージェントの入れ替わりが絶えず起こると考えられる。そこで、2021年度の研究では、このようなエージェントの変動を考慮した最適化問題をオンライン最適化として定式化し、最適解を分散的に推定するアルゴリズムの検討を行った。2021年度はこれらの成果をもとにした学術論文3本が採録され、国内会議7件の発表、国内会議における招待講演1件を行うことができた。以上より、2021年度はほぼ予定通り遂行されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、2021年度に得られた成果をさらに進展させることで、エージェントのダイナミクスや環境の不確かさを考慮した協調制御や分散最適化に関する基礎理論の研究を遂行する。大規模複雑システムにおいて自律分散的な制御を実現するためには、環境やネットワークの変化に柔軟に対応できる制御法や最適化法の構築が必要とされる。2022年度は、構成エージェントの入れ替わりや結合構造が変化するマルチエージェントシステムによる最適化法や意思決定法の検討を行う。特に、エージェントの入れ替わりを考慮した最適化法や意思決定法では、既存研究にあるようなネットワークの結合関係を表す重み行列の収束性に関する議論がそのままでは適用できないため、ネットワークへの接続状況に応じてエージェントの集合を分割して解析を行うアプローチを提案する。また、現実の最適化問題は、決定変数の一部が整数となる混合整数計画問題として定式化されることも多い。2022年度の研究では、このような混合整数計画問題の近似解を分散協調的に求める手法についても検討する。
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Causes of Carryover |
2021年度に発表予定であった研究内容について、追加の検討事項が必要となったため。必要な修正を加え、2022年度に開催される会議や論文誌において発表する経費として使用する予定である。なお、研究計画自体に変更は生じていない。
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Research Products
(11 results)