2021 Fiscal Year Research-status Report
電子の非発光再結合を用いたGaAs中窒素不純物準位の高感度マッピング
Project/Area Number |
21K04130
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
相原 健人 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50892808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 敦彦 宮崎大学, 工学部, 教授 (10264368)
池沢 道男 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30312797)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 分光評価 / 顕微測定 / 窒素等電子トラップ / 非発光再結合機構 / III-V族化合物半導体 / レーザー分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
光学素子として利用を検討している半導体材料に対して、顕微分光評価技術の開発を行う。具体的には、対象となる半導体試料のバンドギャップやバンド ギャップ内に存在する中間準位と一致する波長の光を照射する選択励起条件下での顕微分光測定の開発を行う。取り組みとして、顕微装置系に新たに励起光照射時に光生成される電子・正孔が空間分離することにより生じる「起電力」と、非発光再結合の際に生じる「熱波」をそれぞれ検出可能にする。加えて、試料に電極を形成して光生成された電子・正孔が外部に取り出すことで得られる「電流」の検出も同様 に実施する。これらの信号を取得するために、それぞれ固有の検出器と試料ホルダーを設計・作製して実証実験を行い、得られた結果を共同研究者と議論・測定系の再検討を実施して多様な材料に適用できる評価技術の立ち上げを行うことを研究目的とする。 今年度はまず、III-V族化合物半導体のGaAsで構成されたダイオード構造の中に希薄に窒素をドープした試料を研究対象とした。この試料の面内に局在的に分布・形成された窒素等電子トラップと呼ばれる離散準位の信号をターゲットとした。この試料では電極形成された材料がすぐに用意できたことから、まずは「電流」を読み出すフォトカレント測定を実施した。実施内容は、測定系の構築、窒素不純物準位間の発光が観測される試料の冷却方法、および、上述の試料温度でフォトカレントが観測される条件だしを実施した。また、試料に励起光を照射されることによって生じる「起電力」を観測する表面起電力法用の試料ホルダーの作製・測定系の構築、および、実証実験を行った。加えて、本実験に使用した試料構造でフォトカレントと起電力を観測するために窒素不純物準位で光励起された電子がトンネル輸送で外部に脱出する必要がありシミュレーションソフトや理論計算から簡易的なトンネル確率の算出を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
III-V族化合物半導体で構成されたGaAsのダイオード構造中に窒素を希薄にドープした試料を研究対象として、非発光再結合機構の顕微分光測定系の構築とその実証実験を進めた。検討した非発光再結合機構は、窒素不純物準位に光励起された電子・正孔を試料外部に取り出す「フォトカレント」と、電子・正孔が空間分離した際に生じる起電力を検出する「表面起電力法」の2つの手法を実施した。フォトカレントでは、印加電圧の変化、励起光の強度変化をさせて窒素不純物起因の信号の観測を試みた。また、ロックインアンプの導入も試みた。得られた光学吸収スペクトルにはGaAs起因のバンド端吸収、付随する励起子吸収、および、バンドテイルによる吸収で構成されていた。一方で、発光測定で観測された発光ピークに対応する窒素不純物準位間の信号を明確に観測することはできなかった。その原因として、窒素不純物準位で光励起された電子をフォトカレントして観測するには不純物準位から電子が外部へトンネル輸送で脱出する必要がある。また、局在的に分布している窒素不純物準位の確認に約6 Kの極低温で発光測定を実施する必要がある。そのため、フォトカレントが観測できなかった原因として、極低温で実験を行った結果、内臓電解が大幅に減少してトンネル輸送が発現されなかった可能性が示唆される。これを補うため、降伏現象が起きないぎりぎりまで逆方向に印加電圧を印加した実験をすでに実施した。この場合、試料構造そのものに問題があるため研究対象の再考も検討する必要がある。 また、表面起電力法については現状信号を得る事が出来ておらず、現在はマクロ測定で実績のある試料を準備して原因解明を行っていくことを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に用いたIII-V族化合物半導体であるGaAs中の窒素を希薄にドープした試料に対して、非発光再結合の際に発生する熱波を検出する「光熱分光法」を用いて光学吸収スペクトルが観測可能か室温で実証実験を行う。観測できれば光熱分光法を低温でも実施できるように専用試料ホルダーを設計・作製し窒素不純物準位の信号の顕微分光測定を進めていく。一方で、室温で信号を観測できない場合は、上述の手法等の非発光再結合機構の顕微分光測定を実証可能な新たな半導体材料に変えて実験を進めていく。候補として(1)多結晶構造の薄膜太陽電池や(2)電子線や陽子線を照射したことで欠陥が形成されたGaAs, InGaPおよび InGaP/GaAs結晶系太陽電池を検討しており、これらの試料に対して「電流読み出し」、「光起電力分光法」、「光熱分光法」と発光測定を組み合わせて(1)多結晶太陽電池の粒界の影響や(2)結晶系太陽電池に形成された欠陥の影響の他、発光ムラと非発光再結合機構の関係を調査していくことを検討している。上記ダイオード構造での測定が順調に進めば初期に計画していた二硫化タングステンナノ微粒子も信号検出方法を考案・実証を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は、準備した対象試料に対して、期待する信号を得られる条件出しを中心に行っていたため計画よりも物品の購入を見合わせた。一方で次年度では、初期計画に検討していなかった新たな試料を使用した実証実験を行う可能性が高くそれに伴い、追加試料に応じた物品の購入が発生する予定。
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