2022 Fiscal Year Research-status Report
高効率タンデム型太陽電池実現に向けた新規化合物半導体の創製
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21K04131
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
尾崎 俊二 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80302454)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カルコパイライト構造半導体 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度においても前年度に引き続き、CuxAg1-xGaS2(CAGS)半導体結晶の育成を中心に行った。前年度の垂直ブリッジマン法による結晶成長では、育成した結晶の組成の不均一性が問題となっていた。そこで令和4年度においては新たにボールミルを使用した結晶の育成を試みた。まず、Cu, Ag, Ga, Sを化学量論的に秤量し、ジルコニア製のボールと共にポットに入れた。次にオーバーポット方式の雰囲気制御容器に入れ、真空引きを行った後にアルゴンガスで充満した。アルゴンガス雰囲気下にした容器を遊星ボールミル装置にセットし、回転数を400~800 rpm、回転時間を1~3 hとして結晶の育成を試みた。 まずCu組成xが零となるAgGaS2(AGS)において遊星ボールミルによる作製を行ったところ、目視にて黄色の一様な粉末が得られた。X線回折(XRD)測定を行ったところ、多くの回折ピークが得られたが、それらは報告されているAGSのPDFデータと良い一致を示した。このことから、得られた粉末はAGS結晶であることがわかった。しかし、400 rpmにて作製した試料においてはAGSのPDFデータには無いピークも同時に観測され、それらは未反応のAg等であることがわかった。均一なAGS結晶を得るためには、800 rpmで2 hの反応が必要であることがわかった。 一方、得られた粉末状結晶のXRDスペクトルは、垂直ブリッジマン法で得られた結晶のスペクトルに比べ、ピークの半値幅が大きく、回折強度も小さかった。これは結晶性が悪いことが原因と考えられた。このため結晶のアニール処理を試みた。300~800度にて10分間アニールを行った結果、温度の上昇と共にXRDスペクトルにおいて回折ピークの強度が増し、ピーク半値幅も減少した。700度におけるアニールが結晶性の向上に有効であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画において、令和4年度ではCAGS半導体バルク結晶の育成およびその光学的特性を調べることを主に行うこととしていた。しかし、結晶成長に時間を要したこと、および実験に必要な高圧電源の納品に時間がかかったため、光学測定に関してはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度においては、育成した結晶を使用して光学測定を主に行っていく。具体的には、光吸収測定を行うことで、光吸収端エネルギー(バンドギャップエネルギー)、光吸収係数を調べる。高エネルギー領域における光吸収係数は分光エリプソメータ―を使用する。また、フォトルミネッセンス測定も行う。さらに、変調分光測定を行うことにより、可視~紫外領域における電子バンド構造を調べる。
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Causes of Carryover |
令和4年度では研究費をほぼ予定通り執行した。しかし、学会への参加がオンラインとなったため、その分の旅費が残金として生じた。その残金については令和5年度予算と合わせて使用する予定である。 令和5年度においては光学測定を主とした実験を行うが、その際に必要となるPCおよび結晶表面処理用薬品などの消耗品を購入する予定である。また、研究成果発表のための旅費にも使用する予定である。
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