2021 Fiscal Year Research-status Report
自由に組成制御されたスズ系三元半導体混晶の開発と熱電発電応用の検討
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21K04137
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
志村 洋介 静岡大学, 電子工学研究所, 助教 (40768941)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | SiSn / 多結晶SiGeSn / Snナノドット / 結晶核 |
Outline of Annual Research Achievements |
粒界および重いSn原子による熱伝導率の低減が期待される多結晶シリコンゲルマニウムスズ(SiGeSn)三元混晶の形成とその組成制御に向け、本年度は主に結晶化プロセスおよび混晶化プロセスを分離した新たな成長手法を用いた、多結晶SiGeSn薄膜の形成技術開発に関する研究を行った。酸化シリコン(SiO2)上に自己整合的に形成される結晶スズナノドット(Sn-ND)を結晶核として用いてSiおよびGeを同時に堆積した場合、GeとSnが優先的に結晶化し、Siが非晶質のまま取り残されるのに対し、Sn-ND上にSiを堆積および固相成長・結晶化した多結晶SiSnを予め形成し、これを結晶核として後発的にGeを固相成長させ混晶化した場合に薄膜全体が結晶化可能であることが示された。 成長直後の結晶の格子置換位置Si組成およびSn組成はそれぞれ10.8%および3.5%であり、300度における後熱処理によってそれぞれ32.1%および12.1%に増大可能であることが示された。この組成は、多結晶SiGeSnの組成として最も高く、非平衡成長による組成増大が比較的容易な単結晶SiGeSnで報告されている組成を超えている。結晶化温度の高いSiをSn-NDを用いて低温(225度)で結晶化可能である点および、これを結晶核としたGeの低温固相反応による高Si, Sn組成多結晶SiGeSn形成させることが可能である点について学術論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の期待通り、多結晶SiSnが多結晶SiGeSn形成のための結晶核として有効であることが明らかとなり、高Si, Sn組成を有する多結晶SiGeSnの形成に成功したため。また、安定にSiを供給可能なSi蒸着源として高温クヌーセンセルを新たに導入したことで任意の組成を実現するための幅広い形成条件下で試料作製が可能となり、引き続き本研究を推進できる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
Sn-NDを介して形成した多結晶SiSnがGeに対して結晶核として有効に働くことが明らかとなったため、今後はSi組成とSn組成の制御方法の確立を目指すとともに、特性および物性評価に注力していく。 Sn-NDのサイズおよび密度とSi膜厚が、多結晶SiSnの組成および結晶粒を主とした結晶性に与える効果を明らかにし、結晶核の特性制御を可能とすることで、多結晶SiGeSnの組成制御を目指す。また、混晶ナノドットを結晶核とした多結晶SiGeSn形成と組成制御、および形状を変化させた結晶核を用いた薄膜中の均一な結晶化の実現にも着手している。これらの結晶成長に関連する物性の評価に加え、電気特性、熱電特性およびフォノン分散の評価を組み合わせることで、特性変調の物理を明らかにすることにも注力していく。
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