2021 Fiscal Year Research-status Report
パルス光照射を用いた分極傾斜ナノ構造膜の作製手法創出
Project/Area Number |
21K04146
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
北中 佑樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (20727804)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 薄膜 / 複合材料 / 誘電体 / 結晶構造 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
誘電体材料の高機能化手法として、異なる分極状態を持つ材料をナノ領域で人工的に複合化 し、界面領域に分極傾斜構造を構築する方法が期待されている。本研究では、ナノ構造を含有した有機金属溶液を光照射によって結晶化し、膜中に分極傾斜構造を含有する薄膜形成プロセスを開発することを目的とする。 本年度は、ナノ構造としてBaTiO3ナノ粒子を選択し、ナノ粒子を種々の誘電体ペロブスカイト組成の溶液中に分散調整したコート液を塗布乾燥したコート層に光照射を行って、得られた膜の構造評価を行った。初めにコート液組成としてBaTiO3を選択し、ナノ粒子を含有した有機金属層が固化結晶化する成膜条件について調査した後、コート液組成をアルカリNb系ペロブスカイト酸化物に切り替え、分極傾斜構造膜の作製に展開した。 初年度の成果として、BaTiO3ナノ粒子を核とした液相成膜の結晶化を光学顕微鏡および電子顕微鏡観察により実証できた。ナノ粒子とコート液組成が異なる分散液においても、光照射による膜の結晶化を達成しており、目的とした分極傾斜構造を持つ薄膜の作製に成功した。また、並行してアルカリNb系ペロブスカイトにおいて、傾斜構造により生じる格子歪みや欠陥が分極に及ぼす影響を第一原理電子状態計算を実施し、バルク体とは異なる分極構造を形成することを明らかにした。傾斜構造によって膜の機能構造を向上させるうえで重要な知見が得られており、この電子状態計算によって得られた成果については、対外的な発表も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究においてナノ粒子を含有した複合構造膜の作製に成功しており、当初の予定通り順調に研究が進展している。成膜条件の最適化によってナノ粒子を核とした結晶成長を達成し、目的とする傾斜構造を作製できた。また、通常の熱を用いた成膜では組成制御が困難なアルカリ含有材料においても、本プロセスが有効であることを実証できた。一方、膜の緻密化には課題があることが判明しており、電気物性評価の本格化は次年度に予定している。それを補う目的で、分極を含む電気物性の評価について第一原理電子状態計算を活用した予測を進展させている。
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Strategy for Future Research Activity |
有望な傾斜構造として、初年度に選定したアルカリ含有ペロブスカイト酸化物を中心とした複合体薄膜において、電気物性評価に重点を置いた研究を進展し、物性向上につながる傾斜構造設計を確立することを目的の中心に据えた研究を進展させる予定である。また、BaTiO3ナノ粒子以外のナノ構造への展開も狙うためにナノ構造の合成にも着手し、より多様な材料選択が可能な傾斜構造とすることで、物性向上の可能性を広げることを目指す。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、ナノ構造合成の手法としてビーズミルによる機械粉砕を用いたナノ粒子化を予定しており、その粉砕装置を調達する予定であった。一方、既存のBaTiO3ナノ粒子を使用して傾斜構造の作製条件を探索した結果、必要とされるナノ粒子のサイズが想定よりも小さく(~30nm程度)、また粒子サイズの均一化が膜結晶化に重要であることが判明した。機械的な粉砕手法であるビーズミルは粒子サイズの分布が大きく、目的とする傾斜構造に用いるにはそのままでは不向きである懸念が生じた。 そこで、研究初期においてはナノ粒子及びその分散液は、試薬メーカー外注によって調達し、材料を限定し粒径が制御されたナノ粒子を用い、ナノ粒子合成用の装置調達は次年度に延期とした。2021年度の研究結果により、ビーズミル粉砕による粒子制御は本研究目的に不向きであると判断し、粉砕ではなく合成によってボトムアップ的にサイズ制御したナノ粒子合成を構築する目的で、液相法によるナノ粒子合成装置の調達に次年度使用額を活用することを計画している。
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Research Products
(3 results)