2022 Fiscal Year Research-status Report
金属基板上形成を可能としたナノ微結晶ダイヤモンド膜による高性能電気化学電極の創製
Project/Area Number |
21K04164
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Research Institution | Ariake National College of Technology |
Principal Investigator |
原 武嗣 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (20413867)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノ微結晶ダイヤモンド / 電気化学電極 / 金属基板上形成 / 同軸型アークプラズマ蒸着法 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに同軸型アークプラズマ蒸着法を用いることで、低抵抗Si基板上に熱付与を行わず、かつ反応ガスを使用せずにNCD膜の高速形成ができることを確認済みである。初年度では、膜構造や膜が有する電気化学的特性の詳細について調べた。また、将来的に、作製膜を電極とした電気化学センサシステムを構築すべく、システム側の開発も進めた。これらの一部は、2年目に学会発表および論文発表に至っている。初年度の最後には、金属基板上形成を実現すべく、タングステン(W)、ステンレス(SUS304,316L)等の手軽に入手できる金属上での膜作製に着手した。 現状では、成膜の再現性が非常に低い。上手く成膜できているようでも、電気化学測定においては、膜ではなく基板自体の特性が得られていた。基板は膜に電圧を印可するための背面電極である。基板は溶液中に浸されていないにも関わらず、基板自体の特性が測定されるということは、膜にピンホールや剥離箇所があることが想定される。膜の均一性や密着強度を高めるべく、(1)基板表面の自然酸化膜の除去、(2)基板自体の表面粗さと成膜状態の関係に関する調査の2点に注目して研究を進めた。(1)については、人体や環境に有害な物質が使用されることが多い。本研究では、これらを克服した物質を採用し基板前処理を行った。まずはW基板に着目して基板前処理条件の解明に努め、成膜できる大まかな条件を明らかにできつつある。(2)に関しては、基板自体の表見粗さが数マイクロメートルであることを走査型プローブ顕微鏡により把握した。表面粗さを制御しながら成膜を行うべく、環境を整えている最中である。一方で、(2)で得られた作製膜の電気化学基礎特性は、高性能電気化学電極として注目されている導電性ダイヤモンド電極やダイヤモンドライクカーボン電極に非常に似たものであった。ひとまず(2)を軸として、研究を遂行することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度末より、様々な金属基板上で膜作製を行っているが、再現性が低く、想定している電気学基礎特性が得られていない。基板自体が有する表面粗さが原因で基板の一部が露出された膜表面になっていることを提案したが、研究を進めていくうちに、基板表面の自然酸化膜の除去もキーであることが分かった。現在は上記の2点から、改善に努めている。走査型プローブ顕微鏡により基板の表面粗さについては把握できている。現在、基板表面の研磨環境を整えている最中である。また前処理は、従来の膜作製技術において重要な過程である。低抵抗Si基板上での膜形成においても、自然酸化膜をフッ化水素酸等の環境・人体に有毒な物質により除去することが一般的であるが、本研究で採用している同軸型アークプラズマ蒸着法では、その工程を必要とせずNCD膜の形成を実現できている。金属基板上でも同様と考えていたものの、上手く成膜できない理由が基板前処理にあると考えた。基板前処理には、従来の毒性の強い物質は使用せず、環境・人体に優しい金属表面処理液を採用した。最近では、W基板上に膜を作製できており、その再現性も高い。また、膜の電気化学基礎特性では、基板ではなく膜自体の特性を測定できている。本溶剤にたどりつくまでに、多くの時間を要したために大幅に時間がかかったしまった事、基板自体の表面粗さやその研磨環境を急遽構築することになったことから、本課題は「遅れている」と判断させて頂いたものの、「金属基板上での膜作製」と「電気化学電極への展開」という点で、着実に最終目標に向かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、W基板上での膜作製に必要な基板前処理条件は解明できつつある。本条件の近辺にて、基板前処理時間の最適化を行い、電気化学基礎特性が良好となる条件を見つける。また、電気化学的耐久性や機械的特性についても調べたい。最終的には、作製膜を電気化学電極として、物質の定量・定性評価までを行う。得られた結果は、市販の導電性ダイヤモンド電極や以前、作製した低抵抗Si基板上で作製した膜との比較を行う。これらの電気化学特性は非常に酷似していることが分かっている。W基板上で得た膜がこれらと同程度の特性を有することが一つの目安となる。基板前処理条件の最適化を軸に研究を進め、W基板上での膜作製条件を確定させる。同様に、ステンレス基板等に関しても調査を行う。基板前処理以外の工程に関しては、これまでとほぼ同じである。各金属材料表面の前処理条件が解明できれば、一気に進度が速まる。並行して、様々な表面粗さを有する金属基板を研磨機により準備する。これらに最適化した基板前処理条件を適用し成膜を行う。密着強度の強い膜を金属基板上で作製し、電気化学電極としての性能を最大限に発揮できる最適条件を明らかにする。
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Causes of Carryover |
物品費の変更、学会発表先の変更等のため
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