2021 Fiscal Year Research-status Report
10-100MHz領域で使用される新規希土類-鉄-窒素高周波材料の開発
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21K04165
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
昆 竜矢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (00780199)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 軟磁性材料 / Mhz帯高周波材料 / 希土類-鉄ー窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高周波デバイスでの利用が可能な軟磁性材料の合成およびそのメカニズムについて調査を行う。これは高周波・高出力の無線用やパワーエレクトロニクス用デバイスとしての利用が期待されるGaN電子デバイスのように、電子デバイスの高周波化が進んでおり、それらのデバイスに利用可能な軟磁性材料が存在しないことが背景として挙げられる。これは従来の一軸異方性の材料では共鳴による高周波での損失が大きくなることが原因として挙げられる。このため、10-100MHzでも利用可能な軟磁性材料が実用化されれば、デバイスの小型化、高性能化に大きく貢献することができる。 令和3年度では主に、研究対象とした希土類-鉄-窒素材料の合成およびその磁気特性の評価に取り組んだ。アーク溶解法を用いて作製した合金インゴットを粉砕し、アンモニアガスによる窒化を行った。用いる希土類元素の種類および結晶構造を制御することで複数の希土類-鉄-窒素材料の合成に成功し、それぞれの材料について結晶構造や粉体形状の分析、高周波での磁気特性について測定を行った。これらの取り組みにより無配向の状態で、周波数10-100MHzの範囲で透磁率実数項が10を超える新材料を発見した。これは、研究当初に目標とした数値目標であり、試料の窒化条件の最適化および粉砕条件の最適化によりさらなる磁気特性の向上が期待できる。また、それ以外にも高透磁率を示す材料系を発見しており、これらの材料について、特許出願の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度での研究の進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。これは、申請時の新規材料探索の目標値とした透磁率実数項が10を超える材料系を発見したことが、大きな成果として挙げられる。また、このほかに希土類-鉄-窒素材料において、異なる組成および結晶構造の材料について合成および高周波特性の測定を行っている。これらの成果については、特許出願を進めており、その後外部への発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、令和3年度の研究成果である新材料について、さらなる磁気特性の向上に取り組む。これまでの研究から、窒化量による高周波での磁気特性が変化することが確認されているため、まずは窒化量の最適化について取り組む。また、合金粉の熱処理や粉砕条件により、磁気特性に悪影響を与える可能性が考えられる。熱処理については、金属組織中に高周波特性に寄与しない副相の存在が予想されるため、窒化条件との組み合わせにより、最適な材料組織の生成を目指す。粉砕条件については、粒度分布のばらつきにより高周波での渦電流の増大が予測されるため、粒度分布の最適化を目指す。 また、粉体の最適化に加えて、成形方法の最適化に取り組む。具体的には、成形条件の最適化により密度の向上を目指しつつ、粉体表面への絶縁処理を行うことで、さらなる高透磁率と低損失を目指す。初年度においては、希土類-鉄-窒素材料の粉体にエポキシ樹脂を用いてリング成形を行い、高周波特性の測定を行っている。絶縁処理を行うことで、高周波での渦電流損失の低減が、成形条件の最適化により粉体の体積分率の増加が期待できる。粉体の体積分率の増加は、透磁率の向上が期待できるため、これらの取り組みにより、さらなる透磁率の向上と損失の低減を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス対策の一環として、出勤制限が行われ実験計画に遅れが生じたため。 次年度使用額については、実験の物品費として使用する。
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